インフレ・円安・株高時代には「何もしないことがリスク」になる --- 内藤 忍

アゴラ

4月~6月にかけては、セミナーシーズンです。気候が良く、新年度ということで、新しいことを始めようという人が増える時期。セミナーに行きやすくなるのが理由です。

1年に人前でお話する機会は、40~50回程度はあると思いますが、最近セミナーに参加される方の雰囲気が変わってきました。


まず、参加される方の数自体が増えてきました。以前は会場に空席がある場合も多かったのですが、最近のセミナーは満席になることが多く、例えば現在開講中の早稲田大学の資産設計塾講座は、定員を増員しました。2001年から続けている講座ですが、このような事態になったのは、10年ぶりくらいの出来事です。

そして、参加される方の顔ぶれも変わってきました。参加者の方に聞いてみると、「初めて金融関係のセミナーに参加した」「投資はまったくやったことがない」という初心者の比率が高まっているのです。今までお金に興味の無かった人たちが、少しずつ動き始めているのを感じます。

このような、セミナー参加者の変化の背景には、社会情勢、金融情勢の動きが影響していると思います。

1990年から20年以上に渡り、「株安」「円高」「デフレ」という3点セットが続いてきました。

株式投資したり、外貨を保有すると資産が減ってしまう。そしてデフレで知らないうちにお金の価値が上がっていく。こんな時期には、お金に関しては、何もしないことが一番良い戦略だったのです。

ところが、一昨年の安倍政権誕生から、流れが変わってきました。これからは「株高」「円安」「インフレ」に逆回転が始まる可能性があります。

「何かすることがリスク」から「何もしないことがリスク」に変わったということです。

円安とインフレのリスクに今からどう対応しておくのか。1年2年先ではなく、5年10年先のお金の守り方を真剣に考える時期に来ているのです。

セミナー参加者の変化はこのような流れを敏感に感じ取った人たちが行動を始めたことを示しているのではないかと思います。

今週末の出版記念セミナーも満席で締切。バングラデシュへのスタディ・ツアーは20名の参加者と、以前に比べて倍増。

変化というのは、統計データに表れる前に、現場の気配に表れる。一時的なものなのか、それともこの流れが、これからも続くのか。注意深く見守っていきたいと思います。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年5月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。