「河野談話」は実は妥協の産物だった --- 長谷川 良

アゴラ

時事通信は6月20日、「日本政府が同日、従軍慰安婦問題への旧日本軍の関与を認めて謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話の検証結果に関する報告書を公表し、(1)談話作成時に韓国側と文言調整していた(2)元慰安婦とされた女性への聞き取り調査では、事後の裏付け調査を行わなかった─ことを明記。日韓両政府が文言調整の事実を対外的に非公表とすることで一致していたなどを明らかにした」と報じた。


両国政府の事前の「文言調整」が行われたことが判明し、調整はなかったと主張してきた両国政府のこれまでの発言が虚言であったことが判明する一方、文言調整プロセスで韓国側から圧力があったこと、慰安婦への聞き取り作業がなかった等が分かった。その結果、「河野 談話」の信憑性が土台から崩れる可能性が出てきた。

報告書によると、韓国側から「問題を解決させるためには韓国国民から評価を受け得るものでなければならない」として、日本側に慰安婦の「強制連行」の記述を要求していたことが明らかになった。それに対し、日本側は「軍当局の意向」という表現で問題を決着しようと努力した。最終的には「要請」で落ち着いたが、「河野談話」は慰安婦問題で最重要ポイント、「旧日本軍の強制連行」に関して事実確認ではなく、文言調整プロセスの妥協の産物であったことが確認されたわけだ。韓国側はその後、日本批判の武器として「河野談話」を拡大解釈して利用してきたことは周知の事実だ。

一方、日本側は慰安婦問題の外交的早期解決を優先し、「事実関係をゆがめることのない範囲で、韓国政府の意向・要望は受け入れる」といった妥協姿勢を貫いてきた。その結果、慰安婦問題が後日、両国間の政治問題となる道を開いてしまったわけだ。その点で、日本側の責任も見逃すことはできない。

予想されたことだが、韓国政府は20日、外交部報道官声明を通じ「日本政府が河野談話を継承するとしながら検証を行ったこと自体が矛盾した行為だ」」(聯合ニュース)と、日本政府を激しく批判した。韓国側は日本政府が「河野談話」の検証を公表した時、「河野談話」否定は韓日関係を破綻させる」と警告し、日本側の検証への試みに強い警戒心を見せてきた経緯がある。

「河野談話」の検証結果のニュースを見ていると、韓国側が「河野談話」の検証を恐れ、安倍政権を批判してきた背景が少し理解できた。韓国側が「河野談話」の外交舞台裏の暴露にパニック反応を見せる理由も分かる。検証結果は慰安婦問題を反日攻勢の武器として利用してきた韓国にダメージを与えるからだ。繰り返すが、韓国の反日攻撃の最大武器であった「河野談話」が事実検証の結果ではなく、日韓両国政府の外交の文言調整の妥協の産物だったことが判明したからだ。

付け加えるが、河野官房長官(当時)が「河野談話」には記述されていない「旧日本軍の強制連行」を認める発言を記者会見でしてしまったことは、日本外交上、消すことができない汚点となった。いずれにしても、日本側は「河野談話」の見直しの考えがないことを発表済みだから、韓国は「河野談話」の検証問題について、これ以上、批判を広げるべきではない。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年6月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。