30代も半ばになると、そろそろ管理職への昇格を意識しない人はいないでしょう。多くの企業においては、課長職への昇格が事実上の幹部候補選抜であり、30代後半から昇格者が出始めるためです。それは同時に、部長以上へ続く新たなキャリアパスに乗れるか、それとも平社員コース確定かのターニングポイントでもあります。人事的に言うと、30代とはとても重要な節目ですね。
「若いころは安月給で我慢しつつ、40代以降の出世で取り返す」ことが年功序列制度の本質ですが、きちんと取り返すためには最低でも課長、出来れば部長ポストくらいには就きたいものです。そのためにも、常に自分がどれくらいのポジションにいるのかは意識してチェックしておくべきでしょう。
実は、日ごろの業務の中で、自分がどのくらいのポジションにいるかのサインはいろいろなところから出されています。それらを上手く読み解ければ、その後のキャリアを考えるうえで非常に有益な情報が得られるはず。というわけで、今回は30代の幹部候補選抜についてまとめてみたいと思います。
幹部候補選抜の流れ
たいていの企業では、課長職になると労働組合から脱退します。経営側の一員となったからというのが理由で、幹部候補と呼ばれる所以でもあります。と同時に、年俸制に移行して時間管理も外れ、欧米で言うところの“ホワイトカラー”に近い働き方にようやく近づくわけです。逆に言うと、東大出てもヒラのままだと一生ホワイトカラーにはなれないわけですね。
では、どういう基準で選抜されるか。これは会社によってマチマチですが、だいたい以下のような内規を作って運用しているところが多いです。
・直近数年分の査定成績(3年~5年程度)
・所属事業部門の役員や本部長クラスの推薦
・人事部門の面接
当たり前の話ですが、査定成績だけだとめちゃくちゃ優秀だけどコミュ力ゼロの専門バカが上がってしまうリスクがあるので、そこは人となりをよく知る所属部門側に推薦という形でアナログ判断を一枚噛ませます。ただ、そうすると「本音で言うと彼はいまひとつだけど、今年上げてやらないと後がないから」的な浪花節要素が必ず入ってくるので、そこはしがらみのない管理部門等が最終チェックするわけです。
余談ですが、多くの日本企業では、実は人事部門はたいした権限が無いもんですが、この管理職登用に関してはなぜか強い統制力を維持している組織が多いですね。おそらく、ほっとくと職場の義理人情で瀬戸際のオッチャンばっかり昇格する、とはいえ年功序列なんだからある程度は過去の年功にも配慮しないと組織内秩序が維持できない、といった微妙なバランス感覚を要求された結果、それが可能な唯一の裁定者として権限が確立したのでしょう。ですから、人事の中でも「管理職の人事やってました」的なキャリアの人は、労組対応と並び、実は花形コースだったりします。
さて管理職への昇格ですが、2000年頃までは40代前半が主流で、50代での昇格というケースもまだまだ多く残っていました。「同期よりちょっと遅れてしまったけど、こいつは真面目だから最後に一花咲かせてやりたい」的なニーズに、管理部門も大らかだった時代ですね(課長以上とそれ未満では退職金等で大きな差が生じるため)。
でも近年は慢性的な“管理職ポスト不足”にくわえ、多くの日本企業で脱年功序列の動きが加速し、そうした温情的な措置はほとんど姿を消してしまいました。何年頑張っていようが、会社が区切ったある一定期間内に昇格できなければ一生ヒラで飼い殺し。その結果、厚労省の調査によれば、50代でのヒラ社員比率は既に6割弱にまで達しています。あと十年もすれば「7割は課長にすらなれません」という時代がリアルで到来していることでしょう。
実際、筆者の知る限りでも「40歳以上は管理職には登用しない」とする内規を人事部内で作っている企業が珍しくありません。年功を積んだベテランよりも、柔軟性や新しい視点の方を重視し始めているということですね。というわけで、残念ながらバブル世代(45~50歳)の一般社員は、もはや会社の温情には期待しない方がいいでしょう。団塊ジュニア世代(40歳前後)もそろそろ腹をくくりましょう。そして、それ以下の世代は、もっとも重要な30代での戦いに備えて準備を怠らないことです。
以降、
人事異動から見えてくる危ないシグナル
「実は配属先であらかた出世は決まっている」説は本当か
選抜に漏れてしまった場合の処方箋
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2014年6月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。