中国の習近平国家主席は6月3日、2日間の日程で韓国を公式訪問する。中国指導者が就任後、北朝鮮より先に韓国を訪問するのは初めてだ。それだけに、中韓両国の蜜月関係が改めて話題を呼ぶだろう。中韓両国関係は目下、「修交後、韓中関係は最高レベル」(中央日報日本語電子版)という。両国は今回、「戦略的協力パートナー」から「全面的協力パートナー」へと両国関係を格上げさせ、中露関係レベルと同レベルになるという。
朴槿恵大統領が就任して以来、両国は反日攻勢で共同歩調をとってきた。中国黒竜江省のハルビン駅で今年1月20日、「安重根義士記念館」が一般公開されたばかりだ。安重根記念館の話は 朴大統領が昨年6月に訪中した際に、習近平国家主席に提案したものだ。ちなみに、菅義偉官房長官は、「安重根はわが国の初代韓国総監の伊藤博文を暗殺したテロリストであり、犯罪者だ」と従来の主張を繰り返し、テロリストの記念館開館というニュースに最大級の抗議を表明している。
習主席の訪韓で注目される点は、朝鮮戦争(1950年6月25日~53年7月27日=6・25動乱)の中国の蛮行に対して、中国側が果たして謝罪表明するかだ。朴槿恵大統領は国内ばかりか、外遊先でも反日批判を展開し、告げ口外交と冷笑されてきた。外国人首脳との対談では必ず日本の戦争責任問題に言及してきた朴大統領が習主席の前でも対日批判を繰り返すことは予想されるが、中国の「正しい歴史認識」問題については発言するだろうか。
朝鮮戦争で金日成主席の北朝鮮人民軍が守勢に追い込まれると、中国は軍事介入し人民解放軍を投入して北軍を支援した。中国軍が介入しなかったならば、北朝鮮は崩壊していたといわれる。中国が大量の軍隊を動員した結果、最終的には38度線で南北両国が分断されることになった経緯は周知のことだ。すなわち、中国は南北分断の民族の悲劇の責任を負っているわけだ。
韓国が中国に謝罪表明を要求しても当然と考えるが、韓国政府が中国首脳に向かって謝罪を要求した、とはこれまで聞いたことがない。反日攻撃を展開してきた韓国メディアも不思議なことに中国国家主席の訪韓を控えながら、中国共産党政権に対して過去の蛮行の謝罪を要求する記事を掲載していない。日本に対しあれほど「正しい歴史認識」を掲げて、謝罪表明を執拗に要求してきた韓国側が中国に対しては沈黙しているのだ。
もちろん、中国側も韓国から過去の蛮行に対して謝罪要求が出たとしても謝罪しないのは目に見えている。中国は1992年、韓国と国交を樹立して以来、韓国側にその過去問題で一度として謝罪を表明したことがない(北朝鮮では朝鮮動乱は「韓国と米国が始めた戦争」という歴史教育が徹底的に行われている)。
なぜ、韓国は中国には謝罪要求をしないのか。黒田勝弘氏はその著者「韓国の歴史観」の中で、「中国は応じないからであり、韓国が日本に謝罪要求するのは、日本が応じるからだ」と簡単明瞭に分析している。日本は過去も現在、韓国や中国から謝罪を要求されれば、その度に謝罪を表明してきた。だから、韓国は日本に対して政権が変わる度に要求してきたわけだ。
習主席が今回、朝鮮動乱を含む過去の蛮行に対して韓国側に謝罪を表明したとすれば、間違いなくトップ・ニュースとなるが、その可能性は残念ながら“ゼロ”に等しい。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年7月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。