物質の「テレポーテーション」へ一歩前進

アゴラ編集部

量子力学の世界の粒子に「ボース粒子」というのがあるそうです。これはアルベルト・アインシュタインに高く評価されたインド人物理学者サティエンドラ・ボース(Satyendra Nath Bose)の名前から取られたもので、この「ボース粒子」が多数まとまった量子は「ボース=アインシュタイン凝縮」という物質の状態になります。


「ボース=アインシュタイン凝縮」は、水が氷という固体になったり水蒸気という気体になったりするのと同じ、物質の状態のことを指すらしいんだが、米国の物理学者カール・ワイマン(Carl Edwin Wieman)が1995年に初めて「ボース=アインシュタイン凝縮」を観測して2001年にノーベル物理学賞を受賞しています。そして6月30日、日本の国立情報学研究所がロシア科学アカデミーとの共同研究により「ボース=アインシュタイン凝縮(BEC)」を利用し、原子や公子より大きな物質を「テレポーテーション」させる方法を開発した、と発表しました。

これまで原子などの極小物質の空間移動は実現されていたんだが、それよりも大きな物体の「状態」を移動させる糸口がつかめたらしい。キーポイントは二つ。「ボース=アインシュタイン凝縮」を利用すること、そしてアインシュタインが「不気味な遠隔作用(spooky action at a distance)」と呼んだ「量子もつれ(エンタングルメント)」の状態を観測し、「もつれ状態」ができた瞬間に消えることを克服したこと。この方法によれば、従来なら物体の「微弱な振動」しか「テレポーテーション」できなかったものが、物体の「方向」も移動できるそうです。

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原子や光子よりおおきな「巨視的物体」を「テレポーテーション」するには、1000個以上の原子で結成される「ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)」を使用する。位相がψであるアリス(送る者)の量子状態を、ボブ(受ける者)に送るためには、緑色のラインに応じてまず「量子もつれ」が生成され、「BEC量子ビット1」と「2」が原子数測定される。「テレポーテーション」されると、ボブはアリスが持っていた状態を保有することになる。出典:国立情報学研究所

もちろん、クルマのような物体や人間のような生体を「テレポーテーション」できるわけではありません。ただ、従来は原子や光子くらいしか移動できなかったものが少し前進した、というわけ。研究が進めば、ひょっとするとSFのような「テレポーテーション」が可能になるかもしれません。また、国立情報学研究所によれば、今回の発見により原子や光子より大きな物質を使ったプロセッサの開発につながり、まだ実現されていない非ノイマン型の量子コンピュータ開発に影響を与えるかもしれないらしい。なかなか興奮させられる発見です。

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「ボース=アインシュタイン凝縮」が発見されたルビジウム原子の気体の速度分布データ。左は「ボースアインシュタイン凝縮」が現れる直前で、中央が凝縮が現れた直後。そして右はさらに蒸発させてもほぼ純粋な凝縮が残ることがわかる。出典:Wikipedia

国立情報学研究所
巨視的物体の新たなテレポート方法の開発に成功


派遣暮らしで学んだ、目先のお金稼ぎより大事なもの
レールを外れてもまだ生きる – 派遣OLブログ
正規雇用と非正規雇用の問題は、今の日本の労働にとって議論半ば、といったところです。派遣労働も非正規雇用的な面があり、働く、ということがこれほど真剣に語られる時代も始まったばかりでしょう。このブログに書かれていることは大事です。三つ目は特にそう感じる。正規、非正規などと言っていられません。

Emperor penguins at risk of extinction, scientists warn
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ドイツ代表DFムスタフィ、太ももの負傷によりW杯残り試合を欠場へ
サッカーキング
決勝トーナメントが始まってから、都合のいいことに試合開始が深夜1時と午前5時からになりました。熱戦続きで見逃せない試合ばかり。さすがに1時と5時の両方を見ることはできないんだが、ちょっと睡眠が不規則になって寝不足気味です。当方は毎回、日独伊の参加国を応援。もうドイツしか残ってない。こないだのアルジェリア戦は見応えがありました。最後までハラハラ。次は日本時間で7月5日、土曜日の午前1時から4強を賭けてフランスと激突です。ワールドカップでドイツは過去、1982年のスペイン大会の準決勝でフランスをPK戦、1986年の準決勝でフランスを2-0で破っています。ワールドカップでドイツはフランスにまだ負けてないので、次のも勝つんじゃないかと思います。じゃもう優勝じゃん。

1982年のドイツ対フランス(FIFATV)。リンクがブロックされてるんでYouTubeのほうをご覧ください。

物流支援ロボット「CarriRo(キャリロ)」
ZMP
台車、というのは便利なもので重いものを運んだり、細かい小分け荷物をまとめて運んだりできます。ロボットベンチャーが開発したのは、複数台が連動して動いたり、作業者に追随したりする台車です。リンク先の動画を見るとわかるんだが、作業車が押している台車の後方に荷物を載せた別の台車がついてくる。犬の散歩が意味不明、とはいえ、これはなかなか便利な「ロボット」かもしれません。


アゴラ編集部:石田 雅彦