米4-6月期の決算シーズンが、8日引け後のアルコアとともに幕開けします。すでにこちらでお伝えしたように今期は高い増益率が予想されており、ロイターは6.2%を見込んでいます。
これだけでも、なかなか魅力的な数字ですよね?ロイターはその上、「10%増」もかくやと伝えているんです。理由は、以下の2点。
1)S&P500構成銘柄のうち、事前発表した133社のうち93社が予想以下、24社は予想以上、12社は予想通りの結果に。予想以下と予想以上の比率は4対1となり、2012年10-12月期以来で最低。1-3月期は5.9対1、2013年4-6月期は5.5対1だった。
2)金融危機による景気後退を経て2009年10—12月期に損益が黒字に転換してから、1株当たり利益は決算発表前の予想値を平均5.7%上回る。リセッション後に振れが大きくなった6四半期を除いても、約3%。1-3月期は決算発表を控えた開始する4月1日時点で2.1%だったものの、S&P500終了時点では5.6%と3.5%も上回っていた。
以上に加え、下半期の増益拡大への期待をあおる可能性も。ダウ平均が17000ドル超えを達成した今となっては、S&P500の2000p突破、ナスダックの約14年ぶり4500p回復も時間の問題と予想されること間違いありません。
▽下半期の増益予想
ロイター:7-9月期 10.9%、10-12月期 11.9%
ファクトセット:7-9月期 9.2%、10-12月期 10.2%(7月3日時点)
ところが、忘れてならないのが売上予想。増収率の予想は、利益予想と異なりバラ色全開とはいえません。少なくとも、ファクトセットが7月3日の発表した予想をみると4-6月期は2.7%、7-9月期は3.4%、10-12月期は3.1%と上記の増益率と段違いの差です。
利益はコスト削減やら資産売却やらで実体より良い数字が計上される場合がある半面、売上は企業の成長力を示す上で重要なカギを握ります。その売上高の伸びがこれでは利益の伸び率はともかく規模がいずれ小さくなると考えられ、設備投資や正社員を含む質の高い採用が力強く増加するとは想定しづらいですね。
WSJ紙は、「米企業の設備投資、伸び悩みが続く」見通しを報道。
アメリカの成長率も、売上高を計る上で確認しておきましょう。米1-3月期国内総生産(GDP)は2.9%減と2009年1-3月期年以来のマイナス成長でした。4-6月期は3%付近まで回復するとの予想が大勢です。翻って6月時点のFOMCメンバーの経済・金利見通しを振り返ると、6月末時点の2014年末成長率は3月時点から下方修正していました。ここで思い出して頂きたいのが、モルガン・スタンレーのビンセント・ラインハート米国担当主席エコノミストの予想です。同エコノミストは、米1-3月期GDP確報値の発表以前に「1-3月期のマイナス成長を踏まえると、4-6月期はこれまでの経済指標に基づくと3.5%増へ回復する見通し。ただFOMCメンバーの予想に従えば下半期の成長は少なくとも3.8%増を達成せねばならず、あらためて下方修正を余儀なくされるだろう」と指摘しておりました。仮に成長が期待通りに上振れしなければ、売上の伸び全体も抑えられかねません。
シェイクスピアいわく、「輝くもの必ずしも金ならず」。輝かしい見通しに目がくらんでしまって、高値づかみ……なんてことがないようにして下さいね。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年7月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。