マレーシア航空機撃墜、L980を北側にそれた悲劇 --- 安田 佐和子

アゴラ

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NY時間の午前11時過ぎ、ダウ平均はマイナス圏へ急降下を始めました。

アムステルダム発のマレーシア航空MH17便(ボーイング777型機)がロシア=ウクライナ国境付近で墜落——とのニュースに、米株相場は反応したのです。ダウ平均は序盤に一時13.36ドル高の17151.56ドルと4日連続でザラ場最高値を更新していたものの、17050ドル付近へ下落。引け際にはイスラエル首相がガザ地区への地上軍投入を発表したほか、セントルイス連銀のブラード総裁が早期利上げに言及するなどリスク回避ムードをあおり、約1週間ぶりに17000ドル台を割り込んで取引を終えました。

S&P500は4月以来初めて1%台の下落をみせ、6月26日以来初めて1960pを割り込んで引け。ナスダックは、6月24日以来の安値で終了しています。VIX指数は一時40%を超える急伸を示し、米債務上限引き上げ交渉が難航を極めた2011年8月以来で最大を記録。金相場も1.3%上昇、3日ぶりに1300ドル台を取り戻してクローズしました。米10年債利回りも、5 月後半以来の 2.45%割れを示現しています。

乗員・乗客295名は全員死亡と発表されたこの事件、米国諜報部は地対空ミサイルによる撃墜と断定したとされています。ロシア製Bukミサイルからの砲撃とのニュースも。いずれにしても2001年9月11日に起こった同時多発テロ事件以来の悲劇に、マーケットをはじめ世界に衝撃が走ったのは言うまでもありません。

ただし、ニューヨークの市場関係者は今回の下落に対し比較的落ち着いた反応を示していました。今後詳細が明るみになるにつれ変化が生じるかもしれませんが、現時点で理由としては、1)17日の下落で、ダウ平均の出来高は最高値を更新した1億枚以下、2)年初の中国のシャドーバンキング問題、エマージング通貨安、さらにウクライナやイラクの地政学的リスクなどに対する米株の耐性、3)起こるべきではなかった悲劇——との見方が挙げられます。

特に3)についていうなら、ウクライナ政府は内戦地帯で飛行区域を一部閉鎖していた事情があります。欧州航空安全局は4月の時点でウクライナ上空の飛行に注意喚起していたため、ルフトハンザ航空をはじめエールフランス・KLM、さらにはロシアのアエロフロートなどは同国東部を回避していました。

マレーシア航空MH17便が飛行していたルートは「L980」と呼ばれ、1時間に10機以上が飛ぶと言われています。東京を含めアジアと欧州を結ぶ最短距離にあり、このルートは多くの商業機を含む民間機が飛来してきました。しかしなぜかMH17便のパイロットは通常より北側に進路を取ってしまい、これが命取りとなったかたちです。

燃料をセーブしたかったのでしょうか。

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(出所 : Washington Post

ユーロ航空管制当局は17日に同区域をルート閉鎖を発表、ウクライナ政府も同様の措置を講じましたが、遅過ぎた感は否めません。

(カバー写真 : AP)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年7月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。