なぜマレーシア機は紛争地域上空を飛行したのか --- 岡本 裕明

アゴラ

まず間違えなく今日のニュース、ワイドショーはこのニュースでもちきりになると思います。

マレーシア航空としてはあり得ない悲劇であります。失踪したと思えば次は撃墜とわずかの間に二回も続いたこの想定外の事実に会社再建の可能性は断ち切れてしまったのでしょうか?


私の疑問はなぜ、そのような戦闘区域の上空を民間機が通過するのか、それ自体がおかしいと思っています。航空評論家の意見を伺いたいと思いますが、普通ではありえないケースだと思います。つまり、マレーシア航空にとっては悲劇ではありますが、その前に私はそのような飛行ルートを取ったマレーシア航空に大いなる責任があるかと思います。トランスポンダーという民間機認識のシグナルが出ていなかった可能性も指摘されていますが、それ以前にそこで戦闘状態になっていることは自明の理なのですから航空ルートを戦闘地域上空で設定したこと自体に問題があります。仮に燃費の理由だとすれば論外の選択であったと言えます。

さて、当面の追及点は誰が撃ったのか、ということでしょう。可能性は三つしかありません。ウクライナ軍、親ロシア派武装勢力、それにロシア軍です。声明からはウクライナ軍は自分たちではないと主張しています。親ロシア派武装勢力は自分たちに高度1万メートルの物体を狙える対空ミサイルはもっていないと主張しています。現場はロシア国境から50キロであり、ロシア側からのミサイルで撃ち落とされた可能性も否定できないでしょう。

今のところ、私の手元にある情報では親ロシア派の持つBUKミサイルシステムから発射されたとなっています。撃墜された飛行機にはアメリカ人が20名以上搭乗していたということですからアメリカ政府は必ず真実を見つけ出すはずです。

その撃墜事実が判明した日、プーチン大統領とオバマ大統領は新たなるロシアへの経済制裁に関して電話協議を行っており、その会談中にプーチン大統領側からオバマ大統領にその話題も振られたとされています。両大統領にとってその事実をどう受け止め、どう対処するつもりなのでしょうか? 私が感じる限り経済制裁という国益中心論であって真の解決を目指そうという姿勢が見られない気がします。

今回の制裁もオバマ大統領が押し切っていますが、アメリカがこの問題にこれ以上深入りする意味がそもそもない気がします。それならばイスラエルとハマスの問題の方がより懸念されることではないでしょうか?

ウクライナの国内問題が世界の主要国を巻き込む事態となり、挙句の果てに全く関係のない民間機が撃墜され300名近い命が奪われるという悲惨な事態となってしまいました。この事実は厳粛にとらえなくてはいけません。私としてはこの悲惨な事件をきっかけに双方の停戦に発展させるべきだと思います。オバマ大統領はロシアの経済制裁をするならばウクライナの仲裁を行った方がまだ意味がある気がします。

もう一つ思うことは武器の能力は明らかに凶暴の域となり、かつての戦争のイメージとは全く別次元にあるということです。昔の戦争は日本ならば双方が刀をもってぶつかり、アメリカならば馬に乗って銃で討つのがイメージでしょうか? それが陸軍、海軍というスタイルに変わり、今や、ロケット弾が飛び交う戦争になってしまったのです。イスラエルとハマスの場合もロケット弾が飛び交う戦いであって昔のように陸軍が乗り込むケースはほとんど見られなくなりました。

つまり、戦争のイメージそのものがもはやテレビゲーム感覚であり、一発のロケット弾が想像を絶する被害を与える時代になったということです。戦場にはもはや軍人はおらず、無人飛行機が基地からの画面で爆撃をするような世界です。そういう言う意味では武器を持つ者同士のお互いの緊張感が戦争に踏み切らない抑制力となることも一定の理がないとは言い切れないかもしれません。

何はともあれウクライナ問題の早期解決を図るべきでしょう。マレーシア機の乗客には哀悼の意を表します。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年7月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。