今年も海の日が近づいてきた。日本は世界第6位の領海と排他的経済水域をもつ海洋国家だ。領土面積が世界60位であることを考えると、その特徴は際立っている。ちなみに、1位が米国、以下フランス、オーストラリア、ロシア、カナダと続く。12位のインドや15位の中国よりも、日本は圧倒的に広い排他的経済水域を持つ。
その領海および排他的経済水域を支えているのが、数多くの島である。日本は6852の島から成り、これはインドネシア、フィリピンに次ぐ数だ。私も最近、沖縄の離島に家族旅行に出かけたが、観光地としても魅力的な島が数多い。
そんな沖縄の地で話を聞いて気になったのが離島における教育ついて。離島を多く抱える沖縄県全体では出生率全国1位を誇っているものの、沖縄を含む全国の離島全体では少子高齢化が急速に進んでいるのが現状だ。全離島の高齢者比率は1989年の19.4%から2010年には33.5%に増加、全国平均よりも10%以上高い。島内に高校のある離島は10%のみで、小中学校も次々と廃校になっている。
たとえば、鳩間島の小学校では教員4人に対して児童が3人(2クラス)と、教師の方が生徒よりも多い状況にある。それも赴任した教師が里子を迎えながらなんとか廃校を免れてきたという。島から学校がなくなれば、子どものいる世帯は島外に移住を余儀なくされるし、将来、島に居住する担い手もいなくなるだろう。全ての離島を有人島として保持する必要があるかは議論の余地があるにしても、このまま各島の文化が消え去ってしまうのはなんとも惜しい気持ちになることは確かだ。
離島における今後の教育のあり方を考えるときに、一つの可能性はオンライン教育の充実だろう。たとえば、中学で英語や音楽、理科など各科目の教師の確保が難しくてもオンラインで高質な授業を聴講したり、課題の添削を行ったりすることは可能だ。また、他校とのオンライン交流も進められる。全国の教師のなかでも選りすぐりの先生の授業をオンライン化すれば、離島にいながらもむしろ最高の授業を受けられる可能性がある。離島教育という深刻な問題への対応がむしろイノベーションをもたらす可能性すらある。
実際に、manavee(マナビー)というNPOは大学受験用の授業をオンライン上で無料配信しており、1万人以上の利用者のうち離島の学生が多いという。これは、ビル・ゲイツも注目し、全米で話題となったカーンアカデミーの日本版ともいえる。私の勤める日本財団でもその活動を支援しているが、今後の更なる活躍が大いに期待される。こういったNPOによる試みも注目されるが、学校教育においてもオンライン教育を斬新に有効にフル活用するべきだ。
他にも、小さな離島では難しいかもしれないが、離島の高校で(あるいは中高一貫校にして)特色ある尖った教育を充実させることも考えられる。たとえば、韓国では済州島を国際教育都市にしようと、インターナショナルスクールの開校や海外有名校の分校誘致を進めている。そういった英語教育、外国語教育に特化することで、外部から生徒を引き寄せることも可能だ。また、観光や環境、海洋、水産業など、島の産業を担う人材を育成するとともに、その分野でトップレベルの専門教育を高校で提供すれば、同様に島外から「離島留学生」を受け入れることも可能かもしれない。
少子高齢化、過疎化は間違いなく離島を先頭にして進んでいく。危機を好機に転換する学びの革命が必要だ。
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学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。