ヘッドハンター再定義の時代

新田 哲史

どうも新田です。アベノミクスのおかげか、人手不足経済のせいか、私もヘッドハンターさんから続々とお声がかかっていて、条件提示も結構いいものだから「オレって実はエグゼクティブ人材だったのかよ」と自惚れている今日この頃です。そういうわけで、本日は休日返上で久々に企業イベントのレポート。リクルートキャリアさんの「次世代リーダー キャリアカンファレンス」に行って参りましたので、その模様と雑感をば。


イベントは6月に同社が新たにリリースした「キャリアカーバー」というサービスのプロモーションの一環です。私知らなかったんですが、単純な転職紹介サービスというわけではなく、今後ますます企業からのニーズが増えそうな次世代リーダー(管理職・リーダー層候補)をターゲットに、ヘッドハンターが長期継続でキャリア形成を支援することを目的にしているそうです。登壇したヘッドハンターの清水隆史さん(プロコミット社長)の言葉を借りれば、「中長期でキャリアについてディスカッションできるパートナー」とのマッチングがキモで、まあ、医者と同じように「かかりつけ」のヘッドハンターを見付けてもらえばということです。

※パネルディスカッションの模様。ヘッドハンターの皆さん、眞鍋かをりさんらが登壇

同社がリーダー層とみている1,000人へのアンケートでは、「3年後のキャリアプランを描けていない」方が4割近く、「10年後…」になると6割超にも上っておりまして、この不確実性に富んだ時代にあって、「設問自体がムリゲー気味」と感じつつも、5年スパン程度で客観的にアドバイスできる人への潜在的ニーズは結構ありそうです。

パネルディスカッションでは、眞鍋かをりさん、ロバート キャンベルさんとかテレビでおなじみの方々が登場されたんですが、印象的だったのは清水さんが、眞鍋さんとのやりとりの中で「日本では転職相談を友人や先輩にしてしまうが、一番やってはいけない」と指摘していたこと。ここら辺、ヘッドハンターをもっと使ってね的ポジショントークと一概に言い切れないと思うのは、日本の企業社会はアメリカほどには人材の流動化が進んでおらず、まだまだ終身雇用文化も根強いので、ついつい転職したことのない身近な人間の知見と照らし合わせているだけの人が多いからです。これ独立や起業志望者もやってしまいがちなことですが、結局は転職なり起業なり、その道を知り尽くしたプロか経験豊富な友人に聞いた上で無いと価値のある判断材料は手に入らないんじゃないでしょうか。

※「キャリアカーバー」のトップページより

ところで、リクルートさんがヘッドハンターの利活用を促すサービスを強化する一方、最近は私の友人が社長をやっている某エグゼクティブ転職サービスのように欧米流のダイレクトリクルーティング(DR)を日本に持ち込もうとしている動きもあります。DRは企業が直接求職者をスカウトする中抜き構造で、日本でも一部の大手企業で先行的に導入する動きが見られますが、むしろDRスタイルと、ヘッドハンタースタイルとがせめぎ合う時代が来つつあるような気もしますね。ただ、そうなるとヘッドハンターさんには付加価値がより求められる。求職者に対するスクリーニング機能、あるいは大量の人材データベースから宝石級の人材を探し出すキュレーション機能といった元々の強みに加え、特にリーダー層の転職を専門的に手掛けるヘッドハンターさんは要求事項が増えることが素人の私の目でも明らかなわけです。経営コンサル並みのビジネスリテラシーとか、アジア戦略やっているクライアントにはグローバル経営の知見とか、要求されるスペックもドドッと上がっていく。今後は「優秀なヘッドハンターとは?」という問いに対し、その答えが「再定義」されるようになり、ことハイクラスな転職サービスはより良いヘッドハンターをいかに囲っていくかが重要になっていくんだろうな、と感じるわけです。

それにしても、ヘッドハンターさんが私に持ち込んでくる案件には非常に個性的なものもたまにありましてね。以前、リンクトイン経由で「台湾在勤のコメディニュース編集者」という変化球が国境の向こうから投げつけられ、あまりの意外な配球に茫然自失、見逃し三振を喫して最後の夏を終えた高校球児よろしくフリーズしてしまいました。そのヘッドハンターさん、私の新聞記者歴をちらっと見ただけでとっておきの球を投げてきたんでしょうか。まあ、少なくても「キャリアカーバー」では、そういう飛び道具案件や面白ヘッドハンターさんと出くわす“喜劇”はないと思われます。転職とピッチングは、良い女房役を持ちつつ、慎重に攻めていきたいものです。ではでは。

新田 哲史
Q branch
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ