すでに時代遅れだった「すき家」のビジネスモデル --- 岡本 裕明

アゴラ

過酷な労働問題、更には人手不足でゴールデンアワーに閉店を余儀なくされ店舗続出に待ったがかかった「すき家」のゼンショーに対して第三者委員会が調査報告書を提出しました。それを受けてゼンショーでは二つのプレスリリースを行い、特に「『すき家』の労働環境改善に向けた改革の実施について」に於いては分社化、労務管理の強化、ガバナンスの強化とやや踏み込んだ内容になっていますが、具体性についてはみて取れません。

わたしはこの問題は「すき家」のみならず、多くの日本企業で同様のスタイルはまだまだ残っていると感じており、これをきっかけに大きなうねりを見せるのか、注目しています。


体育会系企業、つまり、厳しい修練を通じて仕事を覚えさせることを経営方針としている企業は80年代にはごろごろ存在していました。証券会社ならば例えばN證券では新入社員に一日100枚の名刺を集めてこい、と命令するわけです。当時、私より2つ上のバイタリティの塊のような先輩が「もうたまらん!」と嘆いていたのをよく覚えています。同様な話は商社でもメーカーでも当たり前でしたが時代の流れと共に企業イメージの改善や人事風評からだいぶ減っていました。その中で飲食は「職人的指向」があるせいか、体育会的スパルタはかなり残っていたのではないでしょうか?「マックなのにセブンイレブン」だと言った知り合いもいました(仕事が朝7時から夜11までの意)。ゼンショーもその一つであったと思います。

そういえばリゲインといえばオヤジなら誰でも知っているエナジードリンクですが、当時のコマーシャルは「24時間戦えますか?」でした。最近のリゲインのCMは「24時間戦うのはしんどい、3、4時間戦えますか?」に変わっています。つまり、雇用する側のみならず、雇用される方も昔のようなパワーはもはや持ち合わせていないのであります。草食系男子という言葉はもう廃れたのかもしれませんが、日本で様々な会社の人と会っていると非常に「あっさり」していると思うのは海外に出ていて一定のタイムラグをもって接しているからでしょうか? 例えて言うなら「豚骨こってりスープ」から「青魚でだしを取ったすっきりスープ」と表現したらよいでしょうか?

いずれにせよ、使う方も使われる方も時代の変化と共にお互いに一定の成長、成熟をしたのですからその流れはある程度くみ取る必要があります。

私の飲食の経験からもワンマンオペレーションというのは精神的に極めてきついものがあると申し上げておきます。夜中の「すき家」でも午前2時ぐらいまでは案外、客はそこそこ来るものです。そして3、4人のグループ客が入れば「ワンオペ」はまずワークしなくなります。それは客の誰かが辛抱強く待つという犠牲をもって成り立っているのであります。私もその場にいましたが大学生らしきアルバイト君の顔は青ざめ、ほぼ頭はブランク状態寸前という感じでした。

今はなくなりましたが、マックの60秒サービスも原田体制の中では最悪の経営選択のひとつだったと思います。マックの成長とは80年代、90年代にマックで謳歌した人々をより楽しませ、次の世代にバトンタッチしていく成長が必要でした。ところが正直、あの経営スタイルは「サザエさん」ではなかったでしょうか? つまり、いつまでたってもカツオくんは小学校5年生でタラちゃんはタラちゃんのままなのです。経営とは人と共に成長するということも必要でしょう。

外食チェーンで兎にも角にも注目されるすき家とマックですが、業界のリーダーとして思い切った指針を打ち出すことが重要ではないでしょうか? マックもカサノバ体制となった今も全く冴えないのは目先のメニューや店舗のデザインにこだわりすぎて本質を見落としている気がします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。