前回に続いて農地転用とメガソーラーのお話です。
前回はざくっと「太陽光発電に適切な土地と優良な農地は条件が似ているので、この狭い日本で本格的なメガソーラーを適地を選定するとなると(北海道を除けば)農地の転用を検討せざるを得なくなる場合が多い。しかしながら優良農地は農業以外に使用することが許されず、多くの場合農地転用の許可がおりずメガソーラー計画が頓挫することが多い。」ということを規制面から細かいことを説明しながら述べさせていただきました。
(http://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/nouchibukai01shiryou02.pdfより)
農水省からしてみればこの50年耕作地は減る一方な訳で、野放図な農地転用を認めることは食料自給率の向上なり農業の活性化なりといった省としてのミッションの放棄を意味することでこれは仕方が無いことです。そんなわけで優良農地の農地転用を認めてもらうには「実質的な農地面積や耕作量を減らさずに、農地を転用する」ということが求められます。一見不可能に思えますが、これを達成するには「新規の農地開拓と農地転用をセットで進める」ということが必要となります。そのためには土地改良法に定める「換地」という制度を利用する必要があります。
「 換地」とは文字通り「土地を換える」ということでして、「転用したい農地と同等の条件の農地を用意してその土地と取っ替える」というような措置です。例えば50haの既存の農地を転用したいなら新たに50haの農地を開発してそれと既存の農地を開発して交換する、ということです。これを実現するには土地の開発はもちろん、関係権利者の合意を取らなければいけないわけでして、現実にはかなり困難です。唯一例外的にそれが可能なのは既存の権利関係が解消されてしまった、被災地ということになります。
(http://www.kamikawa.pref.hokkaido.lg.jp/ss/csi/contents/keikaku/kanchi.htmより)
例えば津波の被害にあった海岸沿いの広大な農地は、今後とも長期にわたって農地として使うことが適切ではないと考えるのが普通ですので、内陸部をかさ上げしてそこに農地を開発し直し、海岸沿いの農地をメガソーラーとして開発するなどということなぞが可能となります。だいたい
①内陸部に新たな農地を開発する土地改良事業計画を立てる
②海岸沿いの農地と内陸部の農地を交換する換地計画を立て関係権利者に同意してもらう
③復興地域全体の土地利用方針との整合性を取り、関係行政団体の了解を取る
というプロセスが必要になります。これを口で言うのは簡単ですが、現実に実現するには膨大な説得交渉が必要となります。手続き的には復興特区法ワンストップ化されているのですが、それはあくまで手続きの問題で現実の人間はワンストップとはいかず、交渉はやはり困難がつきものです。
そんなわけで農地を転用してメガソーラーを作るとなると、事実上被災地に限定されるわけで、その場合もだからといって無制限に農地転用が許されるわけではなく、換地すべき農地を新たに整備し、さらに復興地域の全体の土地利用方針との整合性を取るといったことが必要となります。ゆめにもメガソーラーが地域経済から独立して存在するなどと考えるのではなく、その土地の市民の理解の上で、総合的な土地計画の中にメガソーラー用の土地を確保してもらったと地域に感謝した上で、何らかの形で地域にその利益を貢献することが求められると考えるべきでしょう。例えばメガソーラーの利益の一部を地域農業に還元することや、緊急電源としてのメガソーラの活用許可等は検討事項にあがるべきことです。
そんなわけで少々今回も制度論でしたが、次回は少し被災地域でのメガソーラーの事例を見てみたいと思います。ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2014年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。