イスラエル軍のパレスチナガザ地区への軍事攻撃について国連をはじめ国際社会ではイスラエル政府を非難する声が高まっている。特にイスラエル軍がガザ地区にある国連の学校を攻撃し、多数の死傷者を出した事に対し、潘基文国連事務総長も「戦争犯罪だ」と怒りをあらわにしたほどだ。欧州でもイスラエルとパレスチナ間の軍事衝突がエスカレートするにつれ、軍事力で圧倒的に優位にあるイスラエルへの批判が高まっている。同時に、反ユダヤ主義的言論も頻繁に生じてきた。
パリではユダヤ人シナゴーグ(ユダヤ教会堂)が襲撃され、先月、ウィーンでは欧州最大の反イスラエルデモ集会(約1万1000人)が開かれたばかりだ。同国のザルツブルク州で行われたイスラエルのプロサッカーチーム・マカビハイファとフランスのチームとの練習試合が20人の親パレスチナ系の過激な青年に攻撃され中断されたことがあった。
ところで、欧州メディアでは反イスラエルと反ユダヤ主義の違いを指摘する声がある。反イスラエルとは、現イスラエル政権に対する批判が主流だ(入植地拡大政策、ガザ地区占領など)。ウィーンの反イスラエルデモ集会では、主催者側が反ユダヤ的な言論は慎むように参加者に呼びかけていたほどだ。
一方、反ユダヤ主義というものは、歴史的なユダヤ民族への嫌悪、例えば、ナチスドイツのユダヤ民族大虐殺(ホロコースト)を挙げて、トルコのエルドアン首相は「イスラエルの行動はナチスと同じだ」と叫んだこと、イランのアフマディーネジャード前大統領の「イスラエルを地図上から抹殺せよ」との暴言などは反ユダヤ主義的発言と受け取られている。
キリスト教会の根本主義的グループの中には イエスを殺害した民族としてユダヤ民族に対しての憎悪が根深い。
ただし、前ローマ法王べネディクト16世はその著書「ナザレのイエス」の中でユダヤ民族の“神殺し”説に対して距離を置いている。
いずれにしても 反イスラエル主義と反ユダヤ主義を明確に区別することは難しく、両者が混じり合っているケースの多いのが現実だろう。(口述を代筆)
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年8月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。