金剛杖は霊峰登山の相棒

アゴラ編集部

よく「第六感」と言われるように、我々には「五感」つまり視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のほかに「感覚」や「意識」のような第六のセンサーがある、と考えられてきました。志賀直哉の小説『暗夜行路』の中には、鳥取県の霊峰、伯耆富士の別名もある大山に登る様子が描かれているんだが、登山者らは「六根清浄(ろっこんしょうじょう)、お山は快晴」と唱えながら山を登る。

この「六根」こそ六つのセンサーのことです。霊峰に登る際には、第六感も含め、世俗にまみれた「六感」を清浄にし、俗世への執着を断ち、自身の身を清めつつ、お山へ詣る、というわけ。また、この「六根清浄」という掛け声が「どっこいしょ」という言葉になった、という俗説もあります。


ところで、霊峰と呼ばれる高所へ登山する際、よく金剛杖をつきながら登ります。金剛杖は、六角形のものもあり、素材も形もいろいろで興味深い。木曾の御嶽山や山形の出羽三山などでも入手可能です。和歌山の熊野や四国のお遍路さんの金剛杖は、切断面が正四面体の四角柱になっています。これは各面が仏教における四つの修業界のような意味合いがあるらしい。修験道の元祖、役小角も持っていたといわれる金剛杖なんだが、『勧進帳』で弁慶が義経を打擲したのも金剛杖でした。

富士山の金剛杖の切断面は、富士山頂の八つの峰を表すため、正八面体で八角柱になっています。当方が富士山へ登った際に求めたものは、ツガでできた約150センチ、5尺。直径は約2.5センチ、重さは約400グラム。各山小屋で売られ、焼き印を押してもらって、それを登山の記念にする人も多く、各山小屋では焼き印を押してもらうだけの短めのサイズも売っていたりします。富士山の金剛杖は白木のツガ。また、その素材は赤ガシやヒノキも多く、カシの棒で義経のように叩かれたらさぞ痛いことでしょう。

最近の登山では、スキーのストックのような杖をついて登るようです。富士山へ登った際に気になったのは、登山道の周囲はゴミ一つなくキレイになのに、地面にこのストックの先がけっこうたくさん落ちていること。金剛杖ならプラスチック製の先端もなかったのにな、などと考えつつ、六感どころか体力も総動員し、精根尽き果てながら金剛杖にすがりつつ山頂を目指したことを思い出します。


当方が求めた富士山の金剛杖。山頂にある「久須志神社」で焼き印、というか押印を押してもらった。

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KIKIと行く石鎚山「信仰を集める山で歴史を感じたい」


ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展─印象派を魅了した日本の美
美術館めぐり
最近、当コーナーで美術館案内の記事が途絶え、また再開しなきゃと思ってるんだが、このブログをみるとわかるように、日本人というのはやけに印象派が好きです。いきおい、テーマにする美術展も印象派を前面に売り出したものになりがちで、どこもかしこも印象派ばかり、ということになっている。企画側やキュレーターは、もっといろんなジャンル、いろんな時代、いろんな作家の展覧会を開きたいと思っているのに違いない。しかし、そうなると入場者数が伸びない、というジレンマがあるんでしょう。このブログで紹介されている展覧会は、単なる印象派の作品を並べたものではなく、浮世絵の模写とかいわゆる「ジャポニズム」が西洋絵画へ与えた影響に興味を移そうと努力しています。世田谷美術館という立ち位置が自由度を高めているんでしょうか。ボストン美術館、というのがちょっとした「キモ」のような気がするんだが、この美術館は浮世絵を含めた日本美術の世界的コレクションで知られている。ただ、エジプト美術とか中国美術なんかも多数収蔵していて、特に日本ばかりというわけではありません。日本とボストンの関係は、貝塚を「発見」したエドワード・モースや彼の友人のアーネスト・フェノロサの故郷だったり、岡倉天心がボストン美術館に勤めていたことなど、いろんな背景があります。

ボストン美術館─華麗なるジャポニスム展のホームページ。

ミハエル・シューマッハの医療記録盗難の被疑者が死亡
F1-Gate.com
スキーを滑っている途中、事故に遭い、意識不明の危篤状態だった、元F1レーサー、ミハエル・シューマッハなんだが、この8月には自宅へ帰って治療を継続できるほどにまで容態が回復した、と報じられ、ファンや関係者をホッとさせています。彼の夫人によれば、最も厳しい時期は乗り越えたそうで、最先端治療を受けられる財力はもちろん、やはり驚異的な体力や気力、強運の持ち主なのかもしれません。これは、彼の医療記録を盗み出し、報道機関などへ売ろうとしていた容疑者が独房で自殺した、という記事。この男は医療関係者だったようです。

JAL×NRI、空港旅客業務の先進化に向け、iBeaconおよび スマートウォッチを活用した実証実験を開始
JAL
これ、羽田空港での一カ月の期間限定の実証実験のようです。アップル社の「iBeacon」を使ったサムスン社製のスマートウォッチを使うらしい。ごく近い未来、アニメ『スーパージェッター』みたいに「流星号、応答せよ」とか言うと介護用車いすが自動的に来る、という時代になりそうです。

メモ「エボラ感染者数と死亡者数の推移」
忘却からの帰還
本当に心配なのが、エボラ出血熱です。このブログの表をみても、感染者数も死者数もほとんど減らず、漸増し続けています。西アフリカのシエラレオネ、リベリア、ギニア、という三カ国内で封じ込め、制圧に成功するかどうか。人類の手腕が問われています。

WHOのうち一覧表のある2014/07/01以降発表分)


アゴラ編集部:石田 雅彦