レディー・ガガはなぜ高山病になったのか

アゴラ編集部

米国のミュージシャン、レディー・ガガが、コロラド州デンバーでの公演後、高山病で入院したそうです。デンバーは「マイルハイ・シティ」の別名がある通り、海抜約1マイル、1609.344メートルの高さにあります。

かつて大リーグ球団の本拠地だった野球場も「マイルハイ・スタジアム」と呼ばれていた。当方もデンバーへ行ったことがあります。さすがに高山病にはならなかったんだが、確かに季節のわりに寒くて標高の高さを感じました。
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高山病治療のため、酸素吸入器をつけた自身の写真をアップしたレディー・ガガのinstagram


高山病というのは、低酸素症とも言い、標高の高い高所へ登って血液中の酸素が少なくなると発症します。高所だから酸素濃度が低いわけではありません。海抜5000メートルでも空気中の酸素濃度は、海抜0メートルの地点と同じ21%です。

しかし、高所では大気圧が下がり、その結果「酸素分圧」が下がります。酸素分圧というのは、単位体積あたりの酸素量のことで、これが下がると肺一杯に空気を吸い込んでも体内に取り入れることのできる酸素量が減少する。海抜5000メートルにおける酸素分圧は、海抜0メートルの約半分と言われています。

動脈中の赤血球には酸素を運ぶヘモグロビンがあるんだが、取り入れる酸素量が減れば、酸素と結合しているヘモグロビンの割合も減ります。赤血球は、酸素分圧が高い場所では酸素を受け取って二酸化炭素を吐き出します。しかし「酸素分圧」が低い場所では逆に酸素を放出し、二酸化炭素を受け取るように振る舞う。高所などで「酸素分圧」が低い空気を吸うと肺から血液中の酸素が吸い出されてしまう。すると、体が反応して呼吸が速くなり、血中の酸素量を補おうとします。

当方は先日、富士山へ登ってきたんだが、海抜2700メートルの七合目あたりで、すでに呼吸が速く浅くなり、心臓の鼓動が速くなりました。急性高山病は、頭痛がして、食欲不振や嘔気、嘔吐、倦怠感、虚脱感、めまい、もうろう感、睡眠障害といった症状をともなうらしい。当方は体力がないため、ノロノロ登ったせいで高度に順応し、幸い症状が悪化することはありませんでした。

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昨年2013年の夏期は、富士山が世界遺産登録された後、初めてのシーズンとなり、登山者数も激増しました。登山者の中で高山病が原因でやむなく下山したのは何人くらいいるんでしょう。富士山は、山梨県側と静岡県側で行政区域が異なるため、遭難救助などのデータも各県警で別々のものとなっています。

2013年の夏期シーズンでは、山梨県側、吉田口の七合目救護所に具合が悪いと訴えた患者総数161人のうち、98人が高山病でした。また、山梨県警によれば、47歳の女性が四合目付近を下山中に体調不良となったり、71歳の男性が富士山ツアー登山中に急に倒れ込んで亡くなったりしています。

一方、富士宮口、須走口、御殿場口などを管轄する静岡県警によると、2003年から2007年までの5年間の通年の事故発生件数は87件だったものが2008年から2012年は3倍近い229件にもなっています。2012年と2013年を比べると49件から94件に約倍増し、死者数が1人から3人へ、重傷者数が3人から11人へ、大きく増えています。

静岡県警が2008年から2012年の五年間で救助を行った事故では、高山病が29件で疲労の33件に次いで多いそうです。2013年では県内の事故件数94件のうち、富士山での発病は42件でそのうち32件が高山病。ただ、低体温症の死亡者が多いのに比べ、高山病はそのほとんどが無事救助されています。高山病の症状が出たら早めの手当と休養、そして悪化しそうなら登頂をあきらめ、高所環境からの下山が肝要というわけです。

VOGUE
レディー・ガガ、高山病で入院。


This Is The Terrifying Result Of The Militarization Of Police
BUSINESS INSIDER
米国のミズーリ州で、無抵抗の黒人少年が警察官に射殺され、同地で黒人暴動が起きました。抗議デモが暴徒化。これは、商店などでの略奪行為に発展。鎮圧に出た警察の部隊が、まるでアフガニスタンで作戦行動を行っている「軍隊」のようだ、という記事です。地雷や待ち伏せ爆弾の対策のため、強化されたMRAP(Mine Resistant Ambush Protected)のような装甲車も出動。警察も迷彩服を着た重武装で、上空を報道機関のヘリコプターが飛行することを禁止したらしい。警察の「軍隊化」が進んでいる、と警鐘を鳴らしています。

The Human Face Is Now Officially An Organ
POPULAR SCIENCE
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12 Interesting Facts About Rolex Watches You Did Not Know Before
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高級腕時計といえばロレックス、とされていた時代がありました。デフレの今では、高級腕時計というシロモノもあまりお目にかからない。デフレ脱却の指標が、百貨店で高級腕時計の売上げが上がった、というのではお粗末きわまりない。この記事では、ロレックスの創業者、ハンス・ウィルスドルフの財団やニセモノ判別、ロレックス(ROLEX)の名前の由来などについて12の物語を紹介しています。

‘Trojan horse’ gold nanoparticles treatment could beat brain tumors
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「トロイの木馬」といってもコンピュータウイルスじゃありません。この記事では、ナノテクノロジーを利用し、微細な金の粒子を「トロイの木馬」のように脳へ送り込んで脳腫瘍を治療する方法について書いている。放射線を帯びた金の粒子は、あたかも遺伝子治療の「ベクター」のように脳内へ侵入し、腫瘍に冒された細胞だけを放射線で死滅させる、というわけです。


アゴラ編集部:石田 雅彦