4月から6月の第2四半期のGDPが内閣府から発表され、前期比マイナス1.7%(実質年換算6.8%減)となりました。事前予想はばらつきがあったもののブルームバーグ集計の事前予想値平均が年換算マイナス7.0%程度だったため、この程度で収まったという安ど感から株式市場はプラス反応となりました。この数字をどう捉えるか、見方はいろいろあるかと思いますし、皆様からもご意見あると思いますが、私なりの解釈をしてみたいと思います。
14年の第1四半期は消費税引き上げ前の駆け込み需要とウィンドウズXP効果でプラス1.5%でありました。今回のマイナスで第1四半期の1.5%を足してもまだマイナスであること、更には13年の第4四半期も僅かながらマイナスであったことを考えれば成長する体力が衰えている国家を改めて印象付けた気がします。私は消費税の上げ下げではなく、消費する力が日本で減退している気がしています。
今回のGDP速報のポイントは前期比内需マイナス2.8%、外需プラス1.1%ですが、外需は輸出も減ったが、輸入がもっとが減ったことによるプラスです。つまり、マイナスとマイナスでプラスになったようなものです。が、事実上は内需、特に民間最終消費がマイナス5%(年換算でマイナス20%になります)が効いているといってもよいでしょう。
過去5四半期GDPを並べると+0.9、+0.4、-0.0、+1.5、-1.7%であり、消費税引き上げイベントの補正をすれば着実に下に向かっていると言えます。これはアベノミクス効果がまだ出ていないことを裏付けてしまいます。
報道は消費税の影響を見極めることにフォーカスしていますが、消費税率の変化後には大きな反動があることは分かり切っていることでその落ち込み幅には私は興味ありません。なぜなら、耐久消費財であればあるほど早めに購入し、税の節約に努めるという消費行動は当たり前であるからです。基本的には消費税が上がろうとも一般消費者が必要としかつ、消費能力があれば時間経過とともにその影響は打ち消されていくものです。なぜなら、耐久消費財は欲しいし、必要だから購入するのであり、購入するチカラ、つまり、収入ないし取り崩せる資産がそれに裏打ちされているかが全てであります。
長期的にみると人口減、少子高齢化、成熟国家日本に於いて消費をいくら刺激しても一定以上の水準には絶対に達することはありません。「刺激」というのは「背中を押す」ことであり、その人の潜在的消費能力が増えるわけではなく、どのタイミングで消費するかを決定づけるものでしかありません。政府主導の補助金などインセンティブ手法はプラスの刺激、消費税はマイナスの刺激ということでありますが、あくまでも一時的な相対であり、絶対のものではないのではないでしょうか?
今、イギリスの住宅市場でバブルではないかと言われるほど上昇しています。年間17%も上がり200棟も建築中の住宅市場がロンドンで起きています。理由は外国人投資家による不動産購入です。やはり住宅価格が高騰するカナダでもCMHC(住宅公社)が調べたところ、投資家が17%に上るとしています。外国人や国内投資家という資金を持った者がセーフヘイブンな国の不動産に資金を投入することで消費が上がっている事実はとりもなおさず、消費者数と投入金額の量がGDPの成長のキーであることを改めて裏付けています。
私が訪日外国人を増やし、その受け入れキャパシティをもっと増やすことが大事だと主張するのは移民を受け入れたくない日本にとって消費者数と額を増やす数少ない手法であるからです。
日本はコンパクトにまとまっていけばよいという意見もあります。が、往々にしてその意見は既にリタイアしたか、十分な貯蓄を持ち、人生に余力を持って進める勝ち組のオピニオンではないでしょうか? 多くの就労者世帯は所得税、失業者保険、厚生年金、健康保険などなどを控除され、手取りはこれだけという状態であります。給与が上がらないのはグローバル化が進み、国内産業の空洞化が着実に進んでいること、また、人材も国際化を進める中で日本人に限る理由がなくなっていることも一つ挙げられます。
このままでは日本経済は思った以上に疲弊していくというのが私の意見です。
10年物国債の利率が0.5~0.6%と極端に低い理由はなぜでしょうか? それは日本経済の先行きに期待がないともいえるのではないでしょうか? ではどうしたらよいのでしょうか?
安倍首相の唱える女性の社会進出は家計収入の増加をもたらし、消費にはプラスです。これは大いに進めてもらえばよいと思いますが、究極的には日本全体が儲ける仕組みを再構築する必要があります。しかし、それは60年代からのモノづくりによる飛躍ではない気がします。では、アメリカのように金融で儲けるのでしょうか? それも違う気がします。多分ですが、知的財産を利用したビジネスのような気がします。日本人が一番好きな手法なのではないでしょうか? つまり、肉体ではなく知識や経験、ノウハウで儲けるのです。
「儲ける」というと清貧を良しとする日本人にはいやらしく聞こえるかもしれませんが、私は精神面では清貧をつづけながらもやはり、日本人の生活水準はもっと引き上げるべきだと思っています。そのためにも日本人が稼ぐこと、国内消費を増やすために外国人から稼ぐスキームを作ること、不動産投資を魅力的なものにすることといったよりインパクトのある対策を取らないと回復力が弱々しいものになる気がしています。
なかなか難しい問題であり、とてもこの短いブログで網羅できるものではありませんが、一面として私が強く感じるところを記してみました。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。