スカイマーク、700億円の違約金は!デルタ航空と提携が濃厚か?

尾藤 克之

なにかと話題の多い国内3位の航空会社スカイマークですが、仏エアバスから超大型機A380を購入する契約をキャンセルしたことで、巨額の違約金を請求され、経営に大きな影響が出ることは避けられない状況となりました。そこで、スカイマークの今後の動向を予想してみたいと思います。


スカイマークは、安全運行に対する姿勢について以前から批判を受けていました。航空整備士が不足し、整備ミスが相次いだことから2006年4月11日、衆議院国土交通委員会に西久保愼一社長は参考人招致されています。

同委員会の会議録には、西久保社長の「収益を確保することが最優先の経営課題」との発言があり、多くの人命を預かる航空会社としては不適切ではないかと問題視されました。航空会社が最優先とすべき安全面よりも利益を重視する考え方が、当時から顕在化していました。

12年には、パイロット強制解雇裁判で全面敗訴しています。あるチーフパーサーの体調に懸念を持った機長が、業務を行わないように指示をしたところ、代替要員はいないとして西久保社長にフライトを強制されたことが発端です。

安全面で問題があるとしてフライトを拒否した機長は、その後解雇されました。これを受けて、機長は地位確認と判決確定までの給与支払いを求めた損害賠償を提起し、東京地方裁判所は原告の主張を全面的に認める判決を出しました。

本来、客室乗務員の主たる任務は機内の保安業務です。緊急時における乗客への指示、ドアの開閉、機外への脱出などは、多くの乗客の命に関わる極めて重要な業務であり、機長はチーフパーサーの健康状態から、保安業務を遂行することは困難と判断したのです。ところが西久保社長はその判断を無視し、業務命令に違反したとして機長を解雇したのです。スカイマークは、客室乗務員の保安要員としての責務を軽視している点が垣間見えます。

客室乗務員にミニスカートの制服を着せるとして物議を醸した件に関しても、客室乗務員による保安業務の重要性を考慮せず、単なるサービス提供者として見ていることがわかります。

●最大700億円の違約金も

一方、西久保社長を経営者としての側面から見れば、素晴らしい業績を上げています。社長就任時に100億円を超えていた債務を短期で返済して、12年3月期には、売上高802億円、営業利益152億円、当期純利益77億円を計上しています。

しかし、A380購入契約をキャンセルしたことで、スカイマークにとっては、マーケットの信頼を損なったことが極めて大きな損失となります。原因は確固たる資金調達のめどが立たないうちに売買契約を交わしたことが失敗の原因といわれています。

スカイマークの飛行機はボーイング767-300ERに始まり、より運行規模に適切な小型ボーイング737に統一していました。

そして、中型のエアバスA330を運行するに当たって、安全上の問題やミニスカートの制服問題などがひっかかり、国土交通省(以下、国交省)の許可を取り付けるまでに時間がかかり、何度も就航を延期しました。また、エアバスの航空機に慣れていない同社は、A330導入の際に整備規定集を一からつくり上げる必要性がありました。同時にA330を運転できる機長の採用も喫緊の課題でした。

そのような中、A380を6機エアバスから購入し、14年から順次納入され次第、国際線に進出する予定でしたが、燃料費の高騰やLCCの攻勢、そこにA330をスムーズに導入できなかったことが重なり、資金計画に狂いが生じてキャンセルにつながりました。

エアバスに、4機をキャンセルし、製造に着手している2機についても購入時期を延期したいと打診しましたが、協議は暗礁に乗り上げて、エアバスから契約解除の通告を受けるに至りました。このまま購入を断念した場合、前払い金である265億円が戻らない可能性があり、さらに加えて、最大700億円の違約金を求められる可能性があります。

●デルタ航空が支援に乗り出す?

—「国交省から定時就航率に関しても改善要求がありましたが、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)などの大手が90%台中盤なのに対してスカイマークは80%台。世界的な格安航空会社(LCC)などと比較すれば高いほうですが、機材・人員両面で余裕がないため、不安要素が多い会社といわれています」(某航空会社パイロット)

—「同社は無借金経営を会社の利点として訴求してきました。銀行から融資を受けていないのでメインバンクがありません。今回の騒動で、貸し倒れとなる可能性があるスカイマークに対して、銀行が融資に応じるとは思えません」(某航空会社パイロット)

今後の展開次第では、ANAの傘下に入る可能性もありますが、羽田発着枠(スロット)を欲している外資航空会社も支援や買収に動く可能性があります。特に、米デルタ航空、米ユナイテッド航空を含めた外資航空会社数社が関心を持っているといわれています。

—「外資航空会社の場合、JALが加盟するワンワールドパートナー、ANAが加盟するスターアライアンスに属さない陣営になることが予想されます。ワンワールドパートナー、スターアライアンスはマイレージなどで日本の航空会社と提携するなど、すでに基盤があることからスロット獲得に強い意欲は示していません」(某航空会社パイロット)

—「逆に、日本国内線での共同運航パートナーがなく、旅客をうまく獲得できていないスカイチームが、羽田スロットの獲得に最も意欲を示しているといわれています。スカイチームの中心的存在であるデルタ航空と提携交渉する可能性が高いと思われます。デルタ航空ならばA330をすでに運行させており、希望するスロットが手に入れば、キャンセルしたA380を購入して運行計画を修正することが容易だからです」(某航空会社パイロット)

マレーシアのエアアジアがスカイマーク支援を検討しているとの一部報道もありますが、どこの航空会社の支援を受けるにしても、A380キャンセル問題は大きな影を落とすでしょう。今後のスカイマークの動向から目が離せません。

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