意味不明? 東京都の「子育て官民ファンド」政策 --- おときた 駿

アゴラ

舛添知事が日経の単独インタビューで改めて、子育て(福祉)官民ファンドの設立に意欲を見せているようです。

東京都、福祉で官民ファンド 保育所や介護事業者向け

待機児童ゼロを公約した舛添都知事の目玉政策の一つらしく、補正予算案に入っていたときから疑問には思っていたんですけど、改めて考えてみても有効性が「???」な政策です。


信用力の高い都の出資を呼び水に民間マネーを集めて、子育てや介護事業者に資金提供する。海外からの投資も呼び込む。「お金が足りない場合、新ファンドが銀行と同じ役割を果たす」とのことですが…

まず、「土地がない」「都有地を、できれば安価で貸し出して欲しい」という陳情は、都議会議員になってから数多く受けています。しかしながら、

「銀行が融資してくれなくて(資金が足りなくて)、保育所が作れない」という話は、少なくとも私は聞いたことがありません。
念のため複数の保育事業関係者に聞いてみましたが、

「普通は銀行が貸してくれるでは?金利が安ければ、そっちから借りるけど…」
(≒政策の優先順位はそこじゃないだろう)

とのことでした。
東京都の関係局に、こうした資金調達に関するニーズがあるのがどうか問い合わせてみても、

「そうした調査はしたことがないので、ニーズがあるかどうか不明

だそうです。そうか、「不明」なのか…。
ちなみに、介護施設についても同様の回答でした。

そもそも、行政がお金を出す「官製ファンド・官民ファンド」には、多くの問題点があることが既に有識者から指摘されています。

まず、「同じ役割を果たす」銀行があるのであれば、なぜそちらではダメなのでしょう? 民業圧迫になるのでは? 行政の高い信用力に低金利とくれば、民間企業が競争するのは困難です。

そして、行政の事業なら予算の執行に対して厳しいチェックが入りますが、「ファンド」として外注してしまうと、出資したお金の流れが追いづらくなります。不正や無駄遣いの温床になる可能性が高いわけです。

さらに、ここでもつきまとう「天下り」問題。ファンド自体やその取引先に、行政の人間が出向・再就職する…。こんなにわかりやすく、美味しい出先はないのですから。

また別の視点で今回の東京都の政策について見ると、

・海外の投資(外資)を呼び込む
・事業者が借りやすくする(≒銀行より低金利で貸し出す)

という点が矛盾するのも突っ込みどころです。銀行の金利以下の利ザヤで、外資が触手を動かすのかどうか…。ここにも疑問が生じてきます。

というわけで、まだまだ都知事の考案段階のようですけれど、この「子育て官民ファンド」は極めて疑問が残る政策と言わざるえません。

投資や民間マネーを呼び込みたいなら、保育や介護がマーケットとして機能するようになれば、勝手に向こうの方から飛び込んできてくれるわけで、行政の役割はむしろそのための環境づくり(規制緩和など)ではないでしょうか?

ファンドを作る予算があるなら、保育士の待遇改善など、目に見える部分・不足している箇所に充てていくべきだと思います。

本件は、議会の内外を通じて、継続的に政策提案をしていく所存です。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は都議会議員、おときた駿氏のブログ2014年8月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださったおときた氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。