朝日新聞が次々におもしろい話題を提供してくれるので、私の『朝日新聞 世紀の大誤報』(仮題)という本の原稿がなかなか終わらない。またけさの紙面で、東京本社の市川速水報道局長が池上氏の原稿を没にした経緯を説明している。
8月5、6日付朝刊で慰安婦問題特集を掲載して以来、本社には言論による批判や評価が寄せられる一方で、関係者への人権侵害や脅迫的な行為、営業妨害的な行為などが続いていました。こうした動きの激化を懸念するあまり、池上さんの原稿にも過剰に反応してしまいました。
つまり市川氏は、池上氏の原稿が「人権侵害や営業妨害」になると判断したようなのだが、いったいどこがそれに該当するのか、何も書いてない。「過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」と書かれると、社長が謝罪に追い込まれることを恐れたのだろうか。
この市川氏は、問題の植村記者の記事が大阪で出たとき、東京の社会部で彼と連携して慰安婦報道の中心になった人物だ。彼は『朝日vs.産経ソウル発』という産経の黒田勝弘氏との対談で「貧乏な家で、女衒にだまされて、気がついたら戦地に行かされて、中国などで慰安婦をさせられた」との証言はあったとしながら「僕の取材でも、腕を引っ張られて、猿ぐつわはめられて、連行されたという人は一人も現れていません」と認めている。
この本が出たのは2006年で、市川氏はソウル支局長だった。彼は同じ本で
韓国マスコミは、挺身隊イコール慰安婦であるとか、誤解を植え付けて、外交問題になって、宮沢首相も謝罪せざるを得なくなって、そのうちに黒田さんが「慰安婦狩り証言はウソだ」という記事をバーンと書いて、日韓関係もぐちゃぐちゃになった。
と言っている。彼は「強制連行」がデマであることを、遅くとも2006年には知っていたのだ。「日韓関係をぐちゃぐちゃ」にしたのは産経の報道ではなく、彼や植村氏の誤報だ。彼はそれを誰よりも知っているはずだ。だからこそ池上氏の原稿が恐かったのだろう。
市川氏は、植村記者と一緒に慰安婦デマをばらまいた共犯者だ。彼が検証記事の責任者になるのは、泥棒が犯罪捜査をするようなものだ。市川氏を更迭し、彼が証拠を隠滅する前に社内(あるいは新聞協会)に第三者委員会をつくるべきだ。