「いつも思惑通りにはいかない、だけどそのトレンドを見極める」、これが今週の様々なニュースから思う一言であります。
まずは失望されたアメリカ8月雇用統計。市場予想の23万人増に対して結果は14万2000人増。失業率は6.1%と0.1%ベーシスポイント改善したものの理由は労働参加率の低下。6万4000人の労働市場からの退出で労働参加率は最低水準の62.8%まで悪化しています。市場では一応、「残念な結果」ということになっていますがショックとか、トレンドの変化といった捉え方はほとんどなく、「毎月のこの指標はいつもぶれるから」と気楽さと余裕が見られます。
個人的にもこの指標そのものを気にしなくてもよいと思っていますが、ちょっとしたつまづきが思わぬ怪我につながることもありますから一応頭の隅に置いておいた方がよいと思います。
昨日書かせていただいた欧州の金融政策。一日たって市場からは「そこまで悪いのか」という改めてコトの難しさを感じさせる状況となっているようです。欧州中央銀行は景気刺激策の一つとして民間銀行発行のカバードボンド(債券担保付社債)を買い付けるとしていますが、その担保は住宅ローン。つまり、民間銀行にもっと融資させようという魂胆だと思いますが、高失業率の中、住宅購入を金融政策だけで促進させるにはちょっと無理があるかと思います。
その欧州、悪い話ばかりでもなく、一応、ウクライナと同国の親ロ派が期限を定めない停戦をすることとなりました。目先は一応よかったということになります。ただ、その前にウクライナのポロシェンコ大統領とプーチン大統領は停戦に関する協議を行いましたがプーチン大統領は「俺は停戦する理由がない。なぜならもとから戦争などをしていないからだ」と切り返しているところはこの先、まだ、ドラマが待っている気がします。プーチン大統領がこのまま停戦となり、なにごともなかったかのようにすっーと手を引くとは思えません。ここは読めません。
ところで最近大きなニュースのなかった中国ですが、今週の一番の関心事は香港のトップ選びであります。2017年の香港行政長官の選挙は返還前のイギリスとの約束を実質的に反故する中国共産党の息がかかり、中国共産党の為に行動する行政長官選びということになりました。8月31日に発表されています。
この動きに対してイギリスの反応は鈍いのですが、理由は中国が怖いからでありましょう。以前、中国のポリシーに反対した際に中国側に苛められた経緯があることからすでに返還してしまった香港の行政にこれ以上深く首を突っ込めないという姿勢がありありと見て取れます。
一方、香港側は動きが出ています。その最たるものとして香港の不動産王、リーカーシン(李嘉誠)氏が中国や香港の資産売却に動き出したということであります。このニュースは極めて重要だと思っています。氏は情報通であり、将来を予見しているとされています。仮に香港の地位が将来的に保障されず、中国共産党の手中に収まるのであれば香港のメリットは薄まるとみなしたうえで8月31日の発表前にその動きをキャッチし、資産売却に動いたと読めそうです。
これは必ずフォロワーを生み出す結果となります。それはリーカーシン氏がおこなっているように香港、中国の資産を売却し、欧米の資産を購入するという資産の移動と分散化でありますが、1997年の返還前に起きた香港人の移民権取得と資産逃避ブームの再来を感じさせることになります。
その場合、旧英国連邦であるオーストラリアやカナダは当然プラスの作用が働きますからこのあたりは敏感になっておいた方がよさそうです。
今週は日本でも内閣改造があり、本当にいろいろありましたが、細かいことよりも大勢を掴み、キーになることを見落とさないことが大切かと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年9月6日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。