「抗日戦争」の神話 - 『韓国 反日感情の正体 』

池田 信夫
韓国 反日感情の正体 (角川oneテーマ21)
黒田 勝弘
角川学芸出版
★★★★☆



著者は産経新聞のソウル駐在記者として40年以上、韓国を見てきたベテランだ。彼の目から見ると、慰安婦問題が「壮大な虚構」であることは自明で、朝日新聞の市川速水記者も彼との対談で同意している。問題はこんなバカバカしい嘘が、なぜいつまでもくり返されるのかだ。

日本人にとって韓国はどうでもいい中進国の一つだが、韓国での日本のプレゼンスは非常に大きい。人々は日本の文化が好きなのだが、公式には「反日」が国是になっている。それは単純なナショナリズムではなく、中国を中心とする「華夷秩序」の中では朝鮮が格上で日本は「夷狄」だったのに、近代に逆転されたというコンプレックスだ。

日本人より優秀な韓国人が敗れたのは、「日帝36年」が原因だということになっている。日韓併合も「抗日戦争」に敗れて日本に侵略されたことになっているので、著者が「朝鮮人の志願兵に感謝する」と書くと怒り、朝鮮人特攻隊員の慰霊碑は撤去される。独立は抗日戦争の勝利なので、「戦勝国」だと思っている。これを著者は「強制と抵抗」史観と呼ぶ。

実際には、日韓併合は崩壊した大韓帝国を日本が救済する形で引きずり込まれたもので、伊藤博文は反対していた。その後も日本人は、北海道の開拓のような感覚で「国土開発」をしたのだ。ただ「鮮人」は2級市民で、戸籍などの差別はあった。戦時動員でも、朝鮮人は炭鉱などの危険な職場に送り込まれて数多く死んだ。今も日本人に差別意識が残っていることも事実だ。

慰安婦問題は、こうした韓国人の屈折した反日意識の生んだ幻影である。彼らの脳内では朝鮮半島は「戦地」だったので、軍に強制連行されて「挺身隊」にされた少女の像が建てられるのだ。実際には朝鮮人は競って日本兵になり、その戦死者は靖国神社にまつられている。これが彼らのもっとも思い出したくない過去である。

他方、朝日新聞に代表される日本のマスコミも、終戦直後の贖罪史観を卒業できない。こうした日韓の思い込みが悪循環になって増殖したのが、慰安婦問題だった。10月からのアゴラ読書塾では、こうした中韓とのつきあい方も考えたい。