いま書いている電子本の資料として、メモしておく。本書は1997年に行なわれた国会議員のヒアリングの記録で、本としての完成度は低いが、資料としては貴重だ。特に重要なのは、朝日新聞と一緒になって「広義の強制」を宣伝した吉見義明氏の発言である。
朝鮮半島や台湾では、官憲による奴隷狩りのような連行があったかどうかということは、資料では確認できないのが現状であるということであります。私どもはこういう「官憲による奴隷狩りのような連行があった」ということはこれまでずっと言っておりません。(p.184)
つまり彼の言葉でいうと「狭い意味での強制連行」はなかった。これはすべての歴史家の合意する事実である。では彼は何を問題にするのか。彼は「業者の選定も軍あるいは軍に要請された総督府等が行なっている」というが、これも政府が認めた。「前借金で自由を拘束する契約は当時の民法でも違法」だったので、軍も総督府もやっていない。要は「慰安婦制度そのものが悪だ」ということらしいが、それが他国にもあったことを認めてしまう。
日本軍の場合は非常に目立つやり方をしたという、そのことを書くことがただちにアンフェアになるということではないと思うんですね。もちろんスペースがあればナチス・ドイツはどうであった、連合国はどうであった、ソ連はどうであった、八路軍はどうであったということをちゃんと書いたほうがいい。(pp.210~11)
どこの国でも戦時中に売春施設があった。こういう「女性の権利侵害」は普遍的な問題なので、連合軍についても糾弾すべきだが、スペースがないのでしなかったという。彼のいう慰安婦問題とは、スペースの問題にすぎないのだ。
吉見氏のいう事実関係については、政府が1992年に認めて謝罪した。彼も「政府の認識は私と基本的に同じだ」と認めている。問題はその後だ。ここで重要なのは石原信雄氏で、のちの国会発言より踏み込んで答えている。特に見逃せないのは、次の部分だ。
この問題の初期の段階[1992年]では、韓国政府がこれをあおるということはなかった。むしろこの問題をあまり問題にしたくないような雰囲気を感じたんですけれども、日本側のいま申した人物が、とにかくこの問題を掘り起こして大きくするという行動を現地へ行ってやりまして、それに呼応する形で国会質問を行なう。連携プレーのようなことがあって、韓国政府としてもそう言われちゃうと放っておけない。(p.314)
ここで彼が「日本側のいま申した人物」というのが、高木健一・福島みずほ弁護士である。それは彼女がテレビで公言している。
つまり韓国政府は政治決着しようとしたのに、「強制連行」を騒ぎ立てて日韓の外交紛争を作り出したのは、福島なのだ。彼女は政府がヒアリングを行なった元慰安婦の選定も自分と支援団体がやったことを認めている。その最大の根拠としていた吉田清治の証言を朝日新聞が否定した今、彼女は国会で質問に答える義務がある。