米議会事務局も吉田証言から逃げる

池田 信夫


国内では朝日新聞が降伏してほぼ決着したが、問題は(韓国を除く)海外だ。米議会事務局も「吉田証言が嘘だとわかっても影響はない」という言い訳を出したが、これは朝日新聞がやってから、NYTから赤旗に至るまで多くのメディアの使う逃げ口上だ。議会事務局が2007年に出した報告書は慰安婦非難決議の根拠になったが、ひどいものだった。それはこんな調子だ。

安倍政権が募集の際の軍の強制に関する全ての証拠を否定するのは、日本政府が調査した1992-1993年の報告書における元慰安婦の証言に反するとともに、Yuki Tanaka “Japan’s Comfort Women”におけるアジア各国とオランダの400人以上の慰安婦のうち200人近い者の証言にも反している。

このように「軍の強制」の根拠として引用されるのは、英文の2次資料と元慰安婦の証言の英訳ばかり。英訳する人権団体でスクリーニングがかかることに気づいていない。日本語も韓国語も読めないスタッフが調べたらしく、秦郁彦氏の本は参考文献にもあがっていない。

吉田証言に大きなインパクトがあったのは、それが唯一の加害証言だったからだ。これがなくなると、被害者と自称する原告側の証人しかいない。日本人の慰安婦も、彼らを連行した加害者も、それを目撃した第三者も、物的証拠もない。裁判だったら、とても公判を維持できない。

普通の事件では、被害者は被害を大きく申告し、加害者は小さく申告するから「950人の慰安婦を連行した」という吉田証言を当初は外務省も信用した。客観的証拠が何もないので、加害者である吉田の話が嘘なら、被害者である元慰安婦の話はもっと信用できないのだ

嘘と判明したのは、吉田証言だけではない。朝日の杉浦元編集担当も認めたように、「強制連行は、そういった事実はない」。少なくとも朝鮮半島では、軍の強制連行がなかったことを朝日は認めたのだ。強制連行が否定されると、米議会事務局などのmilitary coercionに関する2次資料はすべて嘘と確定する。

この議会事務局の報告書を含めて、英語圏の資料はほとんど朝日の報道を英語の文献で裏づける形で調査を進めている。それぐらい朝日の影響は大きかったのだ。検証記事では強制連行の有無をごまかしているので、朝日はあらためて訂正・謝罪記事を出すべきだ。

追記:産経によると、議会決議の根拠になった2006年の報告書では吉田の「日本の軍隊が韓国の済州島で女性200人以上を慰安婦として強制連行した」という証言が根拠とされている。