先月27日のアゴラシンポジウムでは、政府事故調の委員長だった畑村洋太郎氏をまねいて、地震国日本のリスク管理を考えた。東日本大震災の教訓として学ぶべきことは多いのに、原発ばかりに関心が集中しているのは困ったものだ。
大震災は、また必ずやってくる。その死者をゼロにすることはできない。被害を最小化するには、有事の体制を考えておく必要がある。震災のとき自衛隊が機能したのは、それがもともと奇襲攻撃などの有事を想定したものだったからだ。
有事に備えるには、広い意味での安全保障が重要だ。歴史上の戦争の多くは、エネルギーの争奪戦から起こっている。畑村氏が特に心配していたのはエネルギー価格が世界的に上昇している中で原発を止め、しかもドルが急速に上がったことだ。震災のときは、食糧やエネルギーが生命線である。
原発をすべて止めてエネルギーにまったく余裕のない状況で「金より命」などといっていると、何か起こったら大変なことになる。日本は供給制約が顕在化し、貧しくなっているのだ。坂本龍一氏が癌の高度医療を受けられるのは、金があるからだ。貧乏人はろくな治療も受けられない。金がなければ、命も救えないのだ。