日本人は「貯金上手」でも「使い方下手」 --- 内藤 忍

アゴラ

投資の日(10月4日)に開催された日本証券業協会主催の記念イベントで、日本にいる外国人3人と投資教育について、トークショーを開催しました。土曜日の東京国際フォーラムには1000人のお客様。大人数の前で登壇するのは、久しぶりです。

一緒に登壇した、イギリス出身のイアンさんは、16年日本にいて、あの大河ドラマ「龍馬伝」にも出演したことのある俳優さん。アイクさんはアメリカ出身。高田純次に憧れてお笑いの世界に入ったという芸人さん。そして紅一点の段さんは、NHKの「テレビで中国語」にレギュラー出演している文化人です。


日本はNISA元年ということで、各国の投資事情や投資教育について意見を交換しながら日本の個人投資家のやるべきことを考えるという内容。1時間の司会進行役を務めました。開場前に打ち合わせをして驚いたことは、この3人は全員投資をしたことが無いという事実。投資事情については、会場にいらしたお客様の方が知識豊富ではないかと心配になりました。

外国人から見た、日本人のメンタリティということで印象に残ったのは「リスクを取らない人生はつまらない」という言葉でした。

将来を心配したり、失敗することを恐れたりしてリスクを取らないで生きることは、エキサイティングな気持ちにもならないし、何のために生きているのかわからないというのが、彼らの言い分でした。

お金との付き合い方で言えば、日本人は貯金は得意だけど、投資に関しては失敗を恐れる余り、リスクを取らなすぎという意見でした。彼ら自身が投資していないので、今一つ説得力に欠けたのですが(笑)、的を得た指摘だと思いました。

そしてもう1つ印象に残ったことは、お金の使い方についてです。シニアになってからも将来の不安を感じ、節約生活をしているうちに人生を終えてしまう。何のためにお金を増やして、やりたいことを我慢してきたのかわからないという意見でした。

お金を使うことに関して、日本人はネガティブに捉える傾向があり、結局使わないお金を溜めこんだまま人生を終えてしまう。その結果、残された家族が遺産相続のトラブルに巻き込まれる。そんな事態も想定されます。お金を使わないことによって、様々な不幸が生まれるリスクもあるのです。

「日本人は」とか「外国人は」といったステレオタイプな決めつけをするのは、危険だということが今回わかりました。アメリカ人は金融資産の半分近くが、株式や投資信託のようなリスク資産になっていますが、ゲストのアイクさんは、学生時代のローンをまだ返済しているということで投資の知識はまったくありません。

優れた方法を実践している人のやり方を素直に受け入れて、自分のやり方を見直していく。外国人から見た、日本人のマネーリテラシーに関する辛口の意見が、来場された個人投資家の方のこれからのお金との付き合い方の改善に少しでも役に立てば、このイベントをやった価値はあるのではないか。アッという間の1時間のトークショーを終えて、そう思いました。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年10月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。