日本の飲食業は大きく様変わりしている --- 岡本 裕明

アゴラ

3週間ほど日本に滞在している間、ビジネスで、あるいは友人と外食に相当行きましたが、あれっと思うのはどの店も客がまばらだったのであります。それはレストランでもB級の店でも飲み屋でもガラガラ、というよりこの時間で口開け? と思わせるような店すらあったのです。

気になりだしたので街を歩くときもなるべくレストランや食堂の中を覗き込むようにして客の入りを見てきましたが明らかに以前と比べ客の入りは少ないのです。これでは店は一回転もしないのではないか、という感さえありました。


もちろん、人気店や広告を打ち込んでいる店はクーポンパワーがあってそれなりに入りますが、クーポンも今や乱れ飛んでいる時代。ちょっとした店ならば次回ご利用いただける割引券が高い確率でついてきます。

先日、横浜のIKEAにレンタカーを駆って買い物に行き、まずは腹ごしらえとレストランに行ったところ、「2万円以上お買い上げの場合には割引になります」とキャッシャーから囁かれました。いくら割引になると言われなかったのであてもせず、その後、3万円ほど買い物をしたので店員に慌ててレストランのレシートを渡したところ全額割引になりました。つまり、食事代ゼロであります。これは想定外でした。

結局いろいろ見聞きし、考えた結果、やはり、日本に於ける外食はその立ち位置を変えてきた気がします。

一昔前は外食は当たり前でした。私も80年代、90年代は家で食べるより外食の方が圧倒的に多かったし、外食に振り向けるお金も多かった気がします。今、私の懐が寂しくなったわけではないのですが、無理して外食をするより別のものにお金を使いたいこと、外食してもそこまで旨いと感じさせる飲食店が少なくなってきたこと、スーパー、コンビニ、弁当屋が激戦に品質も向上した結果、どうしても外で食べる理由がないという事でしょうか。

今回行ったいくつかの店でも価格を下げる努力が優先されているため食材が今一つ、量が僅か、疲れた店構えといった個人的な不満を感じました。

更によく言われるのは「家で作れるものは外では食べない」。ところが最近になり家庭用の調理器具が進化し、以前はプロしか持てなかったものがごく普通にゲットできることで「これなら家で作れる」という発想もあるかと思います。

消費者はより賢くなり、行くなら有名店という傾向は今でも変わりません。例えばラーメン激戦区の池袋に行けばある店には朝から晩まで常に行列、その近隣にあるラーメン屋はいつ見ても席は空いているのです。80年代にはラーメンを食べることが主であったものが、今やこの店のこれを食べたいという位置づけが重視されています。

となれば、飲食店は今さらながら特徴を生かさないと生き残れないでしょう。昔から飲食店は過半数が赤字だったと記憶していますが、今はその傾向は更に高まっているかもしれません。その中でふと思い出したのが「なぜ寿司屋は潰れないのか?」のストーリーです。住宅街の自宅兼の小さな店ならばオヤジ一人仕入れ、仕込みから店先に立つ仕事迄一人でこなせばあとはお手伝いさん一人でやりくりできます。日中は出前、特に冠婚葬祭、来客時の出前はいまだに需要があります。そして、夜は数組の客をこなせば細々とながらもくいっぱぐれることはないのでしょう。特に高齢者は繁華街に行きたがりませんので住宅街の寿司屋の繁栄は続くのであります。

マクドナルドが厳しいとは言われていますが、それは飲食業界全体の声を代表しているともいえるのでしょう。人々の胃袋の満たし方は明らかに変ってきたことを改めて実感した東京でした。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。