駅周辺の再開発には大きな発展の余地がある --- 岡本 裕明

アゴラ

東京の不動産開発で二つのニュースが飛び込んできました。

一つは東京駅八重洲側の再開発。もう一つは丸の内側のパシフィックセンチュリープレイスビルの1700億円での取引であります。


八重洲側の再開発ですが、三井不動産や東京建物が主体となって駅ロータリーの南側の三街区開発となりますが、目玉は地下に長距離バスなどのターミナルを作ることでしょうか? ご存じの方もいるかと思いますが、東京や新宿の長距離バスの発着本数はものすごい数であります。10分ごとに各地方に数台が出ていく仕組みになっていますが、明らかに使い勝手の悪い敷地で無理くり運営しています。新宿に関しては南口のJR線路上にバスターミナルを建設中ですのでこの不便さは間もなく解消するかと思います。

東京駅についても八重洲側のせまっこい所で運営していますが、これでは乗る方も運営する方もたまったものではないという感じでありました。多分、八重洲の地下街との連携を含めた開発になるのだろうと思いますが、これは結構なことだと思います。

日本は電車での移動が主体ですが、最近は細やかな場所まで連れて行ってくれるバス便も使い勝手を知ると圧倒的な便利さがあります。一部のバスは宿泊するリゾートホテルの玄関口まで乗り付けてくれるため、ひょいと週末、ホテルで過ごそうか、という気楽な旅行には最適なのであります。そして価格が安いという事もあります。

一方、例えば新宿から東北道に入る様な長距離バスの場合、池袋の駅前を通るのですが、ほぼノンストップとなります。理由は乗車口を作れないから。帰りは降ろしてもらえますが、降りるところはえ、ここバス停じゃないでしょ、というところで降ろされます。つまり、長距離バスは明らかに発展の余地があるのにターミナルが不足していることで需要を喚起できないのであります。よって八重洲のバスターミナル建設はオリンピックに間に合わせるという事ですし、大いに期待しましょう。

東京駅八重洲口というのは丸の内側に比べてどうしてもあか抜けない感じがします。大体ターミナル駅はどこでも似たような傾向があり、名古屋でも宇都宮でも仙台でも新横浜でも片面が発展して片面の開発が遅れているものです。いや、新幹線の駅に限らず、皆さんの住んでいる私鉄沿線でも大体そんなものです。駅の両側がガンガン開発されているところは割と少なく、新宿、池袋、渋谷といったごく一部に限られています。

よって、今後、日本で不動産開発を推進するには駅の反対側が一つの穴場となるかと思います。ただ、やみくもに開発しても力負けします。駅反対側開発の条件として人の乗降を増やすべく私鉄、地下鉄、バスなどの乗り換え口を誘導し、基幹ビルなど常時人がそこに来るような仕組みを作り上げることが必要です。そして、その基幹ビルの入居者もコアテナントと称する会社が巨大で一流であることが望ましいのであります。

中央線中野の再開発がなぜ、あれほど大成功したかは正に企業と大学の誘致でした。キリンと栗田工業、それに早稲田、明治、帝京平成の三つの大学があります。そしてその中心には巨大な公園が広がるのです(旧陸軍中野学校の敷地です。ちなみに池袋サンシャイン60は巣鴨刑務所跡です)。まさに私が理想としている開発スタイルであります。

つまり、今後の開発にはある意図を持たせなくてはいけません。東京の次の目玉開発は品川、田町地区になりますが、あの細長い広大な土地を私は汐留のようにはしてほしくないと思っております。東京の再開発は巨大なオフィスビルが林立した無味乾燥な冷たい感じがします。職住接近感もありません。渋谷の再開発もあまりエキサイティングではないのは狭い土地を無理やりビルに変えようとしているからかもしれません。そういう意味ではビルを作るデベロッパーは多いですが、地域を作るデベロッパーは案外まだ、未熟感がある様な気がします。

オリンピックに向けて様々な開発プランがまだまだ出てくると思いますが、コンクリートの塊だけは作ってほしくないと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年10月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。