需要不足の時代は終わった

池田 信夫

JBpressにも書いたように、「黒田バズーカ2」は資産価格にはきくが、実体経済にはきかない。他ならぬ日銀の展望レポートが示すように、雇用は大幅な人手不足であり、失業率はほぼ完全雇用状態だ。これ以上、金をばらまいて需要を増やしても、失業率は下がらない。


需給ギャップはすでにゼロ(やや需要超過)であり、これ以上は需要を増やしても意味がない。図(1)のように、物価上昇の最大の原因はエネルギー価格の上昇と円安効果によるコストプッシュ・インフレであり、最近のコアCPIの減速も、黒田総裁が認める通り「原油価格の大幅な下落」が原因である。


注目されるのは消費税の引き上げの影響だが、図(2)のように前回の引き上げ(1997年)のときに比べて大幅に落ち込んでいる。増税率はほぼ同じなので、この差は増税以外の要因と考えるしかない。それは輸入インフレによる供給不足と実質所得の低下である。

総じて日本経済は供給制約の局面に入っており、追加緩和や補正予算で需要を追加すると、円安効果とあいまって悪性のインフレになり、消費税によるコスト増をさらに悪化させるだろう。もちろん土居丈朗氏もいうように、増税の延期には(財政を悪化させる以外には)何の意味もない。