沖縄ネット選挙はスマホ時代の前哨戦 !?

新田 哲史


はいさい新田です。都知事選の後、やまもといちろうさんから「ネット選挙のイケハヤ師」という微妙なネーミングをいただきました。あ、ちなみに「はいさい」は沖縄の方言で「どうも」みたいなもんです。ところで2014年、最後の大型選挙になりそうな沖縄県知事選ですが(衆院解散は無いでしょ!?)、ネット選挙戦は独特の地域性も反映して、なかなか面白くなっているようであります。今回は参戦していないので当初は遠くから戦況をざっくり眺めるつもりだったのですが、沖縄タイムスさんがネット選挙戦のレポート記事を載せるに当たって取材いただいたのを機にちょっとリサーチさせてもらいました。


記事の方はきのう(11月5日)の朝刊で掲載されまして、ワタシメがさぞ専門家扱いとなって恐縮しております。残念ながら電子版では私のコメント部分を含む一部が会員読者にしか読めないようなので、うちなんちゅー(※訂正・やまとんちゅー)の皆様向けに記事のリードと私のコメントだけご紹介しておきます。

候補者なう ネット駆使 知事選では初解禁
街頭とはひと味違う選挙戦が展開されている。ネットを使った選挙活動が昨年解禁。4候補者の陣営はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やネット中継を駆使した、初の県知事選に挑んでいる。

…(中略)…ネット選挙に詳しい企業広報アドバイザー新田哲史さん 沖縄はスマートフォンの普及率が全国的にみて高く、若い世代に訴えるにはネット戦略が欠かせない。離島が多い地域でもあり、有権者がネットを通じて情報を得られるメリットもある。ただ、ネットだけで票をとるのは難しく、現実の選挙活動との組み合わせが大切だ。

これで来年の統一地方選、沖縄の候補者からオファーが来たら出張ができそうで嬉しいなと邪な気持ちを抱いているこの頃ですが、それはさておき、今回私が注目するのは、コメントの最初にあるようにスマホユーザーにどうアプローチしていくか重要かなと思ってます。沖縄には親類縁者がいるので子だくさんの家庭が多いことは元々体験的に熟知していたのですが(出生率は過去約40年、全国ナンバーワン)、若い人が多いのでスマホユーザーの比率は高いんじゃないか、あるいは荒れる成人式のイメージから、ガチンコからマイルドまでより取り見取りのヤンキーの巣窟で、PCなんか使ったことなくてもLINEは使いこなしている的な独断と偏見で仮説を立ててみたら案の定、近年のスマホ伸び率が全国で最も高いらしいです。

もちろん若い世代は投票に行かないので、票を取りに行くためのマーケティングツールとしてネット選挙がまだ頼りないことは私とて当然熟知はしておりますし、沖縄の所得が全国で最も低い状況を考えると高性能・高価格のスマホを持っている若者の比率は、都会ほど高くはないんだろうなとは思いますよ。ただ、イオンとか楽天とか参入が相次いでいる格安スマホが向こう数年で普及していくことを考えると沖縄のような地方にこそマーケットがある。それにユーザー動向を見れば、すでにヤフトピのアクセスの6割、東洋経済オンラインの通勤時間帯のアクセスの8割がそれぞれスマホになっておりまして、コンテンツの作り方については、選挙の世界でも近未来は、スマホシフトに対応していかないとならないだろうね、と普通の感覚なら思うわけですね。

スマホシフト対応ていうのは、候補者がブログを書く場合なら文字数を抑えること。同じビジネスメディアでもPC重視のダイヤモンドオンラインは5000字を超える論考も珍しくないですが、私が東洋経済オンラインに初めて寄稿した今春、4000字を超えてしまって、マスコミ界モバイル派閥筆頭の佐々木前編集長に速攻でスリム化を命じられた思い出があります。あるいはブログやフェイスブックに何かアップするにしても、画像や動画でなるべくビジュアライズ化したりとか、ソーシャルメディアでバズらせるような仕掛けを考えたりといったような、企業がとっくにやっていることを踏襲する必要を今後は考えていかないといけないです。その意味で伸び盛りのスマホ市場である沖縄でのネット選挙は次期衆院選で展開を占う上で「実験場」にもなり得ます。

とはいえ、沖縄ではネット選挙解禁後初の知事選という段階なので、東京でいうと今年の1、2月のフェーズなわけで、まだ候補者、有権者、地元メディアがようやく参院選に続いて2回目の大型選挙でのネット選挙戦なわけです。手探りの段階なので、国政選を見据えた前哨戦というには程遠いのが実状。残念ながら、家入さんや三宅さんがスマホを使い倒してユーザーと語り合う的な双方向性は皆無に近いんですよね。ツイキャスも一方的に垂れ流しているのは物足りない。ただ、個人的には離島に住む若い有権者をネットで動かす事例があれば沖縄らしくて面白いと思うんですがね。都知事選の時、小笠原の父島でポスターの掲示版番号を貼り間違えてネットを使って現地の人に対応してもらったようなオモシロ事案があればと期待しています。

モバイル的にこれはと思う陣営はまだ少ないんですが、せっかくなので各陣営の寸評をして締めたいと思います(※画像は各陣営公式サイトより)。なお、私的にはコンテンツの作り込みで一番面白いのは、下地さんの陣営だと思うんですが、遊び過ぎて選挙結果まで「家入」化しないことを願ってやみません。

【仲井真陣営】父娘共演で優しいお父さん像を打ち出す戦略は初当選時からの軍師三浦御大のアイデアらしく今回も踏襲。ツイッターは当初「事務局やいび~ん(標準語で「です」の意)」の方言書き出しが目を引いたが、内部で怒られたのか自民党型の手堅いツイートに方針転換。

【翁長陣営】公式サイトは涼やかな色遣いのデザイン。「3つのNO」「10のYES」と公約の見出しは分かりやすい。ツイートは「ハイサイ!」のテンションで高く選挙戦の好調さを窺わせるが、発信内容は至ってマジメすぎ。余裕あるんだからツイッター討論など双方向企画やってみては?

【下地陣営】泡沫とか散々な評判を立てられたが、今回のネット選挙戦では「美人時計」をパクッたような写真アップなどコンテンツの工夫ぶりは4陣営で最も健闘。大学生ボランティアのネット中継など若い人が前面に立っているので、双方向でのゲリラ企画に期待。この際、翁長さんに本人が果たし状を持ち込む様子をネット中継したら面白いのでは?

【喜納陣営】せ、切ない。このウェブ1.5的ビジュアルが陣営の清貧ぶりを強調する深謀遠慮があるのだろうか……。ハロウィン仮装とかカヤック等のスマホ中継の機動性は目を引く。残波あたりで選挙フェスやって、沖縄在住の三宅洋平とダブル演奏して盛り上げまくって、公選法違反覚悟のゲリラコンサートとなれば面白い。

ではでは、各陣営のご健闘、心よりお祈りいたします。ではでは。

新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー