「中間選挙後の法則」なら、ラリー継続の期待も…… --- 安田 佐和子

アゴラ

00001

米中間選挙、大方の予想通り共和党が2007年以来初めて上院も制し「ねじれ」が解消いたしました。マーケットは結果を好感、ダウ平均は寄り付き早々にザラ場最高値を更新。ラリー継続に、期待が掛かります。

上院は最後の1議席をめぐり、ルイジアナ州で12月に決戦投票を予定します。
00002
(出所:Washington Post)


ただし、S&P500とナスダックは打ち上げ花火のごとく寄り付きに急伸してから失速してしまいました。理由は「6年目の呪い」と「中間選挙後の法則」にあります。

こちらで指摘したように、オバマ米大統領の就任6年目にあたる中間選挙では上下院そろって敗北する公算が大きかった。そこへきて2012年の米大統領選挙の開票直前に米株が大幅高を演じたように、企業寄りの共和党が勝利する可能性を先取りして米株は上昇。セクター別では 1)強制歳出削減の支出カット幅縮小で防衛関連、2)頓挫するキーストーンXLパイプライン建設計画の事態打開でエネルギー関連、3)医療機器向け消費税廃止期待で医療関連——に対する伸びしろが期待され、物色買いに走る投資家もいたことでしょう。

加えて「中間選挙後の法則」も、買い出動する絶好の口実を与えていました。1946年以降、過去17回行われた中間選挙をみると、S&P500の10月末を起点とした12ヵ月リターンは17戦全勝。負けなしの上に平均の上昇率も17.5%とくれば、買って行きたくなりますよね。9月19日の高値から一時10%近くの大幅下落を経て絶好の買い場が整った10月末には、日銀の追加緩和に加え年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の投資比率変更のサプライズも相場を興奮のるつぼに巻き込みみました。爆上げする舞台は、完全に整っていたといえます。

一気に上昇への階段を駆け上がった高揚感からウォールストリートでは現状、ブルの雄叫びが響き渡っています。とはいえ、割高感が浮上してくるのは時間の問題。決算内容も、手放しで喜べる数字ではありません。トムソン・ロイターの調査によると、S&P500の構成銘柄のうち363社が7-9月期決算を発表した10月末時点で利益は引き続きコスト削減の恩恵から順風満帆ながら、企業の成長を示す売上高は58%の企業がアナリスト予想を上回った程度。長期的平均の61%を下回り、過去4四半期平均の58%と変わらずでした。加えて、ドル高加速に伴って米9月貿易赤字が拡大したように輸出縮小の懸念がくすぶります。

しかもダウ平均は10月15日のザラ場安値から1ヵ月も経たない間に10.3%上昇、S&P500は11.1%上昇、ナスダックは13.0%上昇しています。先行指標として注目のラッセル2000は安値から3日に13.3%高を遂げてから上昇一服をみせ、ダウ平均20種にいたっては4日までに16.5%上昇してから翌5日は小幅高と反応は限定的。中間選挙後は、いったん利益確定売りムードが広がってきました。

(カバー写真:USA Today)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年11月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。