米11月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比32.1万人増と、市場予想の23.0万人増を大幅に上回った。前月の24.3万人増(21.3万人増から上方修正)も軽々と超え、2012年1月以来の高水準を達成。過去2ヵ月分は4.4万人分、上方修正された。なお3ヵ月平均は27.8万人増、6ヵ月平均は25.8万人増となる。このままのペースで就業者数が増加すれば、2014年は年間ベースで1999年以来の高水準を達成する見通しだ。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が31.4万人増加した。市場予想の22.5万人増および前月の23.6万人増(20.9万人増から上方修正)から加速。特にサービスが26.6万人増と、前月の20.8万人増から大きく伸びを広げた。
(サービスの主な内訳)
・ビジネス・サービス 8.6万人増>前月は5.2万人増、増加トレンドを維持
そのうち派遣は2.3万人増>前月は2.0万人増、増加トレンドを維持
・貿易/輸送 7.1万人増>前月は5.6万人増、ホリデー商戦を控え増加トレンドを維持
そのうち小売は5.0万人増>前月は3.4万人増、3ヵ月連続で増加
・教育/健康 3.8万人増>前月は3.7万人増、増加トレンドを維持
・娯楽/宿泊 3.2万人増<前月は5.5万人増、増加トレンドを維持
そのうち外食サービスは2.7万人増、年初来平均の2.65万人を上回る
・金融 2.0万人増>前月は0.6万人増、8ヵ月連続で増加
・政府 0.7万人増=前月0.7万人増、増加トレンドを維持
・情報 0.4万人増>前月は0.5万人減、5ヵ月ぶりに減少した前月から増加
財政産業は4.8万人増となり、前月の2.8万人増を上回り4ヵ月ぶり高水準。11ヵ月連続で増加している。
(財政産業の内訳)
・建築 2.0万人増>前月は0.7万人増、10ヵ月連続で増加
・製造業 2.8万人増>前月は2.0万人増、増加トレンドを継続
時間当たり平均労働賃金は、前月比0.4%上昇の24.66ドル。市場予想の0.2%および前月の0.1%を上回り、2008年11月以来で最大の伸びを遂げた。前年比は10月まで2ヵ月連続で2.0%だったものの、今回は2.1%の上昇を示し市場予想と一致している。週当たりの平均労働時間は34.6時間と、前月まで8ヵ月連続で34.5時間だったトレンドから脱した。2008年5月以来の高水準を示す。製造業の平均労働時間は41.1時間となり、6月に続き2007年以来の高水準に並んだ。前月までは、4ヵ月連続で40.9時間だった。
米11月雇用統計発表後、オバマ米大統領が会見でご満悦だったのも納得の数字。
(出所:WSJ/Zerohedge)
失業率は5.8%となり、市場予想および前月の数値に並んだ。3ヵ月連続で2008年7月以来の6%割れを示現した。マーケットが注目する労働参加率は前月に続き62.8%となり、1978年2月以来の低水準に並んだ9月の62.7%を上回る水準を示す。
ただし家計調査はバラ色だった事業調査とは様相が異なる。失業者数は前月比11.5万人増となり、前月の26.7万人減を含む3ヵ月連続での減少トレンドを中断させた。雇用者数は0.4万人増と、6ヵ月連続で増加したなかで最も強い伸びを達成した前月の68.3万人増から大幅に減速させている。就業率は、それでも前月に続き59.2%と約5年ぶりの高水準だった。
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は11.4%と、前月の11.5%から低下した。3ヵ月連続で2008年10月以来の12%割れを維持している。一方で平均失業期間は33.0週と、前月の32.7週から延びた。少なくとも2010年3月以来でもっとも短い9月の31.5週を上回った水準を保つ。失業期間の中央値は12.8週と、前月の13.7週から短期化した。2009年4月以来の低水準となる8月の13.2週および9月の13.3週から延びた。
フルタイムとパートタイム動向をみると、フルタイムは前月比0.2%減の1億1948万人となり小幅ながら5ヵ月ぶりに減少した。パートタイムは0.3%増の2777万人と、2ヵ月連続で増加した。
イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率──の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点─○
10月は11.5%、10月の11.5%から低下。2008年10月以来の12%割れを継続。不完全失業者数も前月比2.5%減の685.0万人と、7ヵ月連続で減少。
2)長期失業者 採点─○
6ヵ月以上の失業者数は11月に281.5万人と、前月の291.6万人から3.5%減少。失業期間が6ヵ月以上の割合も30.7%と、10月の32.0%を下回り少なくとも2009年6月以来の低水準に。一方で平均失業期間は33.0週と、10月の32.7週から延びた。
3)賃金 採点─○
11月は前年同月比2.1%、2012年11月から続く1.9~2.2%のレンジを維持。週当たり賃金の場合は前年比2.4%と、2013年8月以来の高水準を遂げた。生産労働・非管理職の時間当たり賃金は10月に続き前月比0.2%上昇。前年比ベースでも2.2%と、9ヵ月ぶり低水準だった10月の2.1%を上回った。
4)労働参加率 採点─○
11月は62.8%と、10月に続き1978年2月以来の低水準だった9月の62.7%を上回った。非労働人口は9245万人と、前月の9240万人から増加。ただし、過去最悪を記録した9月の9260万人以下を維持。軍人を除く民間労働人口も1億5640万人と、0.1%増と小幅ながら2ヵ月連続で増加した。
ヒルゼンラス記者は、雇用統計後に配信した記事で「世界の中銀は2つの道筋へ分かれていく」と指摘。日銀が異次元緩和第2弾に踏み切り欧州中央銀行(ECB)が追加緩和を模索する一方で、米連邦公開市場委員会(FOMC)は出口路線を突き進むと見込む。その上で、今年最後となる16-17日開催のFOMCでは「相当な期間(considerable time)」の文言を外すかどうかがカギとし、フィッシャーFRB副議長やNY連銀のダドリー総裁の発言を踏まえ削除を決断する可能性を示唆した。
JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、今回の結果を受けて第1弾の利上げ時期につき「当方の予想、2015年6月から後ずれするリスクが後退した」とコメント。”相当な期間”の文言については、「次回16-17日開催のFOMC声明文で削除する方向へ傾いている」とした。
モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスも、2週間後に迫るFOMCで”相当な期間”の文言削除を見込む。
バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストも、”相当な期間”をめぐり「16-17日開催のFOMCで金融政策が経済指標次第という言質に沿って外してくるだろう」と予想。ただし、就業者数の加速に反し比較的伸び悩みをみせる賃金に合わせ「バランスを取るため、利上げに慎重になるとのスタンスを強調する」と見込む。第1弾の利上げ時期は「2015年6月」で維持しつつ、「商品価格が急落すれば9月にずれ込むこともありうる」と付け加えた。
賃金の伸び率、金融危機前の3%超えから大きく下回る水準を維持。
(出所:WSJ)
ロイターによると、5日の米短期金利先物はFedの利上げ開始について予想時期を前倒しする動きをみせました。2015年7月の利上げ織り込み度が50%を超え、発表以前に優勢だった2015年9月から早まっています。
——以上、米11月雇用統計は絶好調の労働市場を示したものの、エコノミストは利上げ見通しを前倒ししていません。米短期金利先物も、2015年半ばの以前の利上げに傾くまで変化せず。今後はホリデー商戦明けの臨時雇用のかさ上げ効果はく落とともに、賃金の伸びが米7-9月期の雇用コスト指数に近づいていくかが、焦点となります。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年12月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。