円安で日本経済に明るさ --- 井本 省吾

アゴラ

11月の貿易赤字が8919億円となった。赤字は2年5ヶ月連続だが、赤字幅は前年同月比32%縮小した。赤字幅の縮小は2ヶ月連続。原油安で輸入が減ったことに加え、電子部品を中心に輸出がふえたのが原因だ。

輸出額は前年同月比5%増。ようやく円安に伴って輸出が拡大してきたと見られる。「工場の海外移転で製造業が空洞化し、いくら円安になっても貿易赤字は収まらない、構造的な赤字なのだ」と言われてきたが、モノには限度がある。


円安が進み、長期化すれば、それに対応して国内生産をふやしたり、新たな商品を開発し、国内生産したりする動きが出てくる。赤字幅の縮小はそのさきがけではなかろうか。15日付けのカシオ計算機についてのブログも、この一環だ。

円安が原材料の上昇→商品価格の上昇を招き、消費税立の8%への引き上げとあいまって個人消費を冷やしているのは間違いない。

だが、円安は輸出の拡大と海外工場の収益増、外国人旅行客の急拡大を生み出しているのも確かであり、これに原油安が加わって日本経済を底上げしている。

一方で、原油安でロシなど産油国の経済失速、それに伴う金融不安などが浮上しており、相対的にリスクの少ない円の評価が上がり、円高傾向になっている。

しかし、1ドル=80円だったころに比べればまだまだ相当の円安だ。円安をバネにした日本経済の改善傾向は続くだろう。


編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2014年12月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。