2015年、日本を襲う外交・安全保障リスク(中)5~6月

站谷 幸一

(上)1~4月」からの続きです。


3.5~6月
(1)5月
4月末~5月初旬 安倍首相訪米?前後に2+2でガイドライン改定?
9日 過去最大規模の大祖国戦争勝利70周年式典を中露共同でモスクワで開催。中露の「ドイツ・ファシズムと日本軍国主義に対する戦勝70周年記念行事」の一環。なお、ロシアは金正恩第一書記にも招待状を出した由
未定 日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議(バクー)
(2)6月
7~8日 ドイツのエルマウにて、G7サミット開催予定
20日 沖縄戦終結70周年
22日 日韓基本条約50周年
末 このころまでにはガイドライン改定、TPP交渉妥結
(3)注目点
第一は、5月9日の過去最大規模でロシアが主催する、大祖国戦争勝利70周年式典である。
今年5月の中露首脳会談にて、習主席は、

「来年は反ファシスト世界戦争と中国人民抗日戦争70周年である。プーチン大統領と私は、ファシズムと軍国主義の残忍な攻撃の悲劇を決して許さない。第二次世界大戦での勝利と戦後の国際秩序の成果を保護することを約束し、共に世界の人々とともに、祝事や記念行事を開催することに合意した」

としており、これは11月の北京での中露首脳会談でも再確認されている。

5年前の前回、小泉総理は訪日を餌に渋々参加したがどうなるのか。この時、安倍首相以外には、アナン事務総長、ブッシュ大統領、ユーシェンコ大統領、ベルルスコーニ首相が参加したが、これらの国々が参加するかは怪しく、むしろオバマ大統領は、安倍首相の不参加を要請するだろう。

しかも、金第一書記にも招待状が出されており、彼と安倍首相が出席した場合、習主席、プーチン大統領、安倍首相、金第一書記、ベラルーシのルカシェンコ大統領等という、新「悪の枢軸」と欧米から指弾されかねなくなる。日露北三国同盟と誤解されてしまう。

米中関係が良好なことを考えても、安倍首相は出席してはならないが、小泉首相同様にプーチン訪日のために参加してしまうかもしれない。そうなれば日本の破滅である。

第二に、ゴールデンウィークに安倍首相は訪米するとしているが、これが実現するかである。安倍首相ほど、会いたくて、会いたいとしながらもオバマ大統領との会談が延期されたり、中止説が流れたことのある首相はいないが、今回もそうなる可能性が高い。

その理由はまず、『お土産』がないことである。統一地方選直後に、騙し討ちのように一気にTPP妥結すれば、TPPは『お土産』にはなるが、それだけでは寂しい。現金なオバマは会わないか、会談しても中国や韓国より冷遇するかもしれない。

となれば、ガイドラインでの大幅譲歩だが、それでも『お土産』にはならない。
ガイドラインのような極めて事務方レベルのような内容(筆者は極めて重視するが)は、オバマ大統領は関心がないからだ。安倍首相が『お土産』を何を用意するのか、それが見返りに見合ったものなのかを注目するべきだろう。

第三は、ガイドライン改定がまとまるのかである。今回のガイドライン改定交渉は、現行の新ガイドラインの硬直性と地域性を取り除くという目的に日米が合意し、民主党政権末期に開始した。かなり米側は渋々だったが、現行のガイドラインは有事と平時しかない、つまり有事となれば米国が自動参戦のような内容であること、そして、周辺事態以外がないことに不満を持っていたので、そこを変えようという日本側の提案に納得し、作業が始まったのである。

しかし、そこからがいけない。尖閣でのグレーゾーン問題という超ローカル課題に固執する日本側と、サイバー宇宙、全世界等の超グローバル課題を重視する米側の主張が食い違い、日本側が当初盛り込むことを望んだ敵地攻撃能力保持もどこかへ行き、中国の話もどこかへ行き、結局、日本側の一方的な同盟協力ばかりが大きくなるばかりである。

もし妥結するならば、米国にとってばかり意味があるか、両者にとって意味のない極めて希薄化した内容になると思われるし、それが嫌なればとても春にまとまるとは思えない。改定時期と内容に注目するべきなのがこの時期である。
 
2015年、日本を襲う外交・安全保障リスク(下)7~12月」に続きます。

站谷幸一(2014年12月20日)

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