2015年、日本を襲う外交・安全保障リスク(下)7~12月

站谷 幸一

(中)5~6月」からの続きです。


4.7~9月
(1)7月
なし
(2)8月
6日、9日 原爆投下70周年
15日 戦後70周年、安倍談話?
この頃 次期米大統領選挙の指名争いが事実上開始?
(3)9月
未定 臨時国会、自民党総裁選
3日 大戦終結と中国人民の勝利を祝う式典を中露共同で北京にて開催。中露の「ドイツ・ファシズムと日本軍国主義に対する戦勝70周年記念行事」の一環。
5日 ポーツマス条約110周年、プーチン訪日か?
20-21日 G20財務大臣・中央銀行総裁会議
(4)注目点
第一は、戦後七十周年である。一説には過去の戦争を総括する安倍談話をもくろんでいるとされるが、これが戦後の輝かしい歴史を否定する安倍首相お得意の「戦後自虐史観」となるか、小泉談話を継承した『戦後に誇りを持つ歴史観』を基盤とするものとなるかが注目される。

勿論、前者となれば日米関係を悪化させることは間違いなく、避けるべきだろう。仮に安倍首相の歴史観が正しいとしても、日本の歴史は無限に続き、神州不滅だと思うのであれば今急ぐ必要などない。

第二は、やはり中露共同のイベントである。9月3日に、盛大に北京で抗日戦勝70周年行われると思われ、これにオバマ大統領が最近の米中接近、新しい大国間関係の一環として参加した場合、米中露韓が一堂に会し、日本を批判する場になってしまう可能性がある。

だからこそ、安倍首相は来年は自己と取り巻きの主張を我慢、臥薪嘗胆すべき年なのだが……

第三は、その直後にポーツマス条約110周年があることである。プーチン訪日は、4月で調整中という説も聞くが、訪米前でもあるし、安倍政権の歴史イベント好きとプーチン大統領がバランスをとることを考えた場合、3日に北京に出席し、5日に東京で日露講和110周年の可能性が高いと考える。この時期でなくとも、訪日実現の際は、平和条約の展望まで踏み込めるかが重要だろう。

5.10~12月及び時期未定
(1)10月
未定 朝鮮労働党第7回党大会
10日 朝鮮労働党70周年
(2)11月
15-16日 G20首脳会合 トルコ
未定 ミャンマー大統領選挙?
(3)12月
不明 COP21、フランスで開催
18日 日韓国交正常化50周年
23日 天皇陛下誕生日(82歳)
未定 ミャンマー大統領選挙?
(4)時期未定
年末? ASEAN経済共同体創設
4月?9月? プーチン訪日
6月まで? TPP交渉妥結
(5)注目点
第一の注目点は、朝鮮労働党第7回党大会と創建70周年が10月にあることである。おそらく、この前に核実験、北方限界線での挑発、ミサイル発射などをしてくる可能性が高く、要注意となる。

第二は、ミャンマー大統領選挙が来年末に予定されていることである。これが一歩間違えれば、ミャンマーの春となる可能性もあり、注意すべきだろう。

第三は、戦後の輝かしい歴史を作ってこられた今上陛下の誕生日である。陛下のお気持ちを害するような国難がなく、誕生日を迎えられることを切に願う。

6.総括
基本的には、第一に歴史問題関係のイベントが集中することである。今回の海外報道で安倍首相に対して批判的な報道ばかりが目立つように、そういう色眼鏡で見られている安倍首相は、「日米関係の為にも」慎重な行動をすべきだし、一歩間違えれば、キューバとイランなき後の、日露北の新「悪の枢軸』となってしまうことになることを明記すべきである。

第二は、相互連鎖的なイベントが多いことである。中露の戦勝式典や日米ガイドラインや首脳会談、TPP交渉、北朝鮮の挑発行為と、それぞれが複雑に影響し合う可能性が大きく、本来は安倍首相以外の自民党首相なら、こうした状況を生かして、戦後レジームを全肯定することで、米国を味方につけ、国際的な地位を向上させる大チャンスなのだが、安倍首相には望むべくもない。願わくば、日本の国益を棄損する悪循環を作ることがないように望むものである。

いずれにせよ、筆者の考えに反対の方でも、2015年は、前途多難かつビッグイベントが集中する年であることは同意いただけると思う。その意味で、どのような考えの方であっても、このカレンダーが何かの役に、特に日本外交の為の議論に役立てばうれしく思う。

付記
今後も内容は機会をとらえてアップデートしたいと考えています。
今年も残り少なりましたが、皆様とご家族にとって、良い年末を迎えられることを祈念しています。

付記2(12月21日)
ポーツマス条約が三か所中二か所が110周年のところ、70周年と誤記載しておりましたので訂正いたしました。ご指摘ありがとうございます。

站谷幸一(2014年12月20日)

twitter再開してみました(@sekigahara1958)