日本経済新聞の田村正之編集委員がコラムで「スマートベータ」について取り上げていました。田村さんと言えば、資産運用に関し最も深い知識と見識を持っている、日本のメディアにおける貴重な存在です。
図は、コラムで取り上げられていたリサーチ・アフィリエイツ社が算出している「FTSE RAFIエマージング インデックス(円ベース)」と呼ばれる指数の推移です。過去15年間で同じ新興国マーケットの代表的な指数であるMSCI新興国株指数に対し、2.3倍の上昇になっています。
「スマートベータ」とは、市場の平均であるインデックスを上回るリターンを目指す運用方法です。その点ではアクティブ運用と変わらないのですが、人件費の高いファンドマネージャーを使いません。企業価値型のスマートベータでは、企業のファンダメンタルズを例えば株主資本、キャッシュフロー、利益、配当といった指標で評価し、機械的に銘柄を選択していくのが特徴です。
それは、時価総額だけで計算して構成した指数を使う「インデックス運用の矛盾」を巧みに突いているとも言えるのです。
TOPIXのような、時価総額を使ったインデックスは、株価上昇で時価総額が大きくなると、組み入れが増え、構成比が高まります。市場の構成比率と同じポートフォリオを持つのが目的ですから、当然のことです。しかし、これは割高になった銘柄をより多く買い、割安になった銘柄の組み入れ比率が低くなることを示しています。
新興国株式のように、流動性が低く、特定の銘柄に資金が集中して、買われすぎになったり、逆に売られる時には、過剰に下げるような市場では、時価総額をベースにしたインデックス運用では、効率的な運用ができない可能性があります。グラフの例としてなっている新興国市場は、時価総額ベースで運用するインデックス運用よりも、それにとらわれないスマートベータが、相対的に良いパフォーマンスになる傾向があるとも言えるのです。
注意しなければいけないのは、「スマートベータ」も万能な運用手法ではないということです。同じような運用方法を取る人が増えてくれば、インデックスに対する超過リターンは消えていくことになりますし、時価総額以外のデータを使って銘柄選択してもインデックスに勝てるとは限らないのです。
実際、「スマートベータ」の中でもインデックスを下回るパフォーマンスになっているものも存在しています。
「スマートベータ」を使った運用商品は投資信託にもいくつかあるようですが、品揃えや流動性から言えば、海外ETFが圧倒的です。日本の個人投資家が、このような運用手法に低コストで気軽にアクセスできるようになるのには、もう少し時間がかかりそうです。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。