経済産業省が12月19日から固定価格買取制度の変更の方針についてパブリックコメントを開始しました。
内容は概ねこれまでこのブログで解説してきた内容にそったものですが、このパブリックコメントは具体的な改正条文自体は示さないものの規定へのインプリメントのあり方を示したものなので、条文に沿って改めて論評を交えて解説したいと思います。
施行規則第6条関係(接続拒否自由の見直し)→h26.1月中旬から即日施行
再エネ特措法により、電力会社は固定価格買取制度の認定を受けた再エネ設備を持つ発電事業者から電力系統への接続を要求された場合に断ることはできない、とされています。再エネ特措法施行規則第6条はこれに対して電力会社が例外的に接続請求を拒むことができる条件を定めたものです。
この条文では電力会社側から再エネ発電事業者へ求めることができる出力制御の条件を担保しているのですが、これを大幅に拡大して以下の変更を行い、1月中旬から即日施行します。どれもかなり重要な変更ですが特に影響が大きい変更は赤字にしてます。制度変更までの時間はないので、皆さん急いで対応するようにしてください。
【①出力制御の対象拡大】
現行の出力制御ルールは、太陽光・風力発電のうち、500kW以上のみを対象としているが、500kW未満の発電設備まで対象範囲を拡大する。
【②出力制限の上限の見直しと蓄電池の位置づけを明確化】
現行制度では、太陽光・風力発電設備については、無償での出力制御の上限値は一日単位で年間30日と設定されているが、再エネの最大限の導入を図る観点から、その上限値を時間単位に変更しそれぞれ年間360時間、720時間とする。(*上記措置については出力制御と同等の措置(蓄電池の充電等)を行うことによって、この出力制御を代替することが可能なことを明確化する。)
【③(新設)バイオマス発電の出力制御ルールの確定】
バイオマス発電については出力制御の対象にするものの、以下の分類に沿って(化石燃料混焼発電→ バイオマス専燃発電→ 地域型バイオマス発電)の順番に出力制御することを明確化する。
【④(新設)遠隔制御システムの導入の義務化】
太陽光発電設備について、時間単位でのきめ細かな出力制御を実施する場合に必要な設備(リアルタイム制御指示器、パワコンなど)の設置を再生可能エネルギー発電事業者に求める。
【⑤(新設)接続枠の空押さえの防止】
接続枠を確保したまま事業化に至らず、接続枠の空押さえしている案件が今後生じないように、対処策を新設する。具体的には接続枠の確保を接続契約時点とするよう電力会社の運用を統一した上で、当該契約の締結に当たり、発電事業者が、「工事費負担金を接続契約締結後1か月以内に支払わない場合」や「運転開始予定日までに運転開始に至らない場合」には電力会社が当該契約を解除できることとすることに同意しないときは、電力会社が接続拒否を行うことができることとする。
【⑥指定電気事業者制度の出力制御対象拡大】
施行規則第6条第7号に基づいて指定された「指定電気事業者」は、一定の範囲で上記②に定める出力制御の上限を超えての出力制御をすることが認められている。(*12月22日の経産省からの告示で東電と関電以外のいわゆる電力会社は指定された)今回は指定電気事業者制度の対象を500kW未満の太陽光発電・風力発電設備にも拡大する。
【⑦将来的に系統への接続が可能な枠が増加した場合の対応(新設)】
既に接続枠を確保しているにもかかわらず事業開始に向けた取組が進まない案件に係る接続契約の解除や地域間連系線の更なる活用等の取組により、新たに系統への接続が可能な枠が一定規模生じた場合には、経済産業大臣が指定電気事業者ごとに定める条件(※現状未定。今後議論。)に従うことを条件として、系統への接続を行うこととする。
施行規則第10条関係(変更認定の運用見直し)→h26.2月1日から施行
続いて事業者が簡易な手続きで処理できる「軽微な変更」の範囲について定めた施行規則について以下の変更を加えることとしています。こちらは2月1日以降の変更申請からの運用見直しとされていますが、申請にかかる手続きの時間を考えると6条関係と同じくほとんど猶予時間がありません。設備使用の確定は時間が急ぐ必要があります。
【①認定発電設備の出力変更】
これまでは「認定発電設備の大幅な出力の変更」(既認定発電設備の出力の10kW以上かつ20パーセント以上の変更)のみを変更認定の対象としていしたが、平成27年2月1日以降に申請される変更から、全ての出力変更を変更認定の対象とする。(*全ての電源が対象)
【②太陽電池の基本仕様の変更】
太陽光発電設備については、平成27年2月1日以降に申請される変更から、「太陽電池のメーカー、種類、変換効率又は型式番号の変更」を変更認定の対象とする。
補足→上記2点から考えるに、出力をパワコンベースで認定を受けている場合(普通そうだと思うが)に、申請様式における構造図に影響しない範囲において、パワコン出力を下回らない範囲でのパネル出力の増減を図ることは認められると思われる。ただしこれはあくまで推論なので、実際の運用を待つほかない。
価格告示関係(太陽光発電の調達価格関係)→h26.2月1日または4月1日から施行
併せて調達価格の決定のタイミングについてもはいわゆる価格告示で定められているのですが、は現在調達価格の決定については、「認定(変更認定含む)」又は「接続の申込み」のいずれか遅い方を行った時点の調達価格を適用することとしています。
これについて、変更認定については2月1日から、①出力の増加、②太陽電池のメーカー若しくは種類の変更又は変換効率の低下を行う場合、当該変更がなされた時点の調達価格が適用されることとなりました。(つまり年度をまたいで①,②の変更をすると調達価格が下がるということです。)
一方通常の認定については4月1日以降に、電力会社への接続申込日を電力会社との接続契約の締結日に変更する点や、運転開始後における発電出力の増加に伴う変更認定時点で調達価格を適用させる方向で、平成27年3月頃に平成27年度の調達価格見直しと併せてパブリックコメントを行う方針が示された。
総括と積み残し
そんなわけで
「1月半ば以降は東電と関電管内以外の新規案件は出力制限の範囲が拡大するよ」
「2月以降軽微変更でパネルメーカー変えたり出力を増減することはもう認めないよ」
「接続枠の空抑えはもうさせないよ」
というところが経済産業省からの大きなメッセージとなっております。
これで概ね制度しては問題点を解消し大きな変更を終えたわけですが、一つ課題が既存の接続枠空抑え案件に関する対応が明確に示されていないことです。経済産業省のこれまでの資料を見るに、「いつかのタイミングで電力会社から権利者に負担金の払い込みの催告が来てそれに対応しない場合接続枠を解消する」、ということが見込まれるわけですがそれがいつになるかは相変わらず不明確なままです。
これはある意味当たり前で、電力会社の判断でやることを経済産業省が言うわけにはいかないということなのですが、あんまり急で困るのでいつ催告が来てもいいように負担金を払い込んでない案件を持つ権利者は催告が来た時点でどう判断するか、覚悟だけは決めておく必要があるように思えます。
その他今後の示唆として、指定電力会社の管内では今後出力制限が増していくので、影響緩和のための蓄電池の導入、ということも視野に入れていかなければならないことになる、でしょう。これは蓄電池会社にとっては大きなチャンスになるし、一方で発電事業者にとってはコスト増です。
ということで来年の再エネ市場は大変革を迎えることになりそうですが、とにもかくにも経済産業省の皆様これだけの大改正、年末にお疲れ様でした。
ではでは今回はこの辺で終わらせていただきます。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2014年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。