中国反体制派の海外メディア「大紀元」(12月26日)よると、西安市にある西北大学・現代学院のキャンパスで、クリスマスを祝うことを批判し、「欧米の休日に反対」や「西洋文化をボイコット」などのスローガンが掲げられた。大学側はイブの夜に学生全員を集め、孔子など中国の伝統文化を紹介する映像を鑑賞させたという。この記事を読んで驚いた。
クリスマス禁止令は欧米のキリスト教文化の影響を阻止し、伝統文化を擁護するという理由からだろうが、その主張は、ナイジェリアで少数宗派の信者たちを迫害するイスラム過激派テロ組織「ボコ・ハラム」を想起させる。「ボコ・ハラム」とは、「西洋の教育は罪」という意味だ。クリスマスは中国文化に悪影響を及ぼすという中国共産党政権の主張となんと酷似していることだろうか。
世界第2の経済大国に成長した中国とアフリカのイスラム過激派テロ組織を同列に置き、その主張は酷似していると指摘すれば、北京政府から大目玉を食らうかもしれないが、規模と程度の違いはあるが似ている。ただし、中国共産党政権が実施している少数宗派への弾圧は「ボコ・ハラム」のような低次元、原始的ではなく、国家主導の組織的迫害だ。法輪功信者たちから生きたままで臓器を摘出し、チベット仏教徒へは激しい同化政策を実施している。
「西洋の教育は罪」という主張と、「クリスマスは国民に異教文化の悪影響を与える」という指摘の間に余り距離がないように感じるのだ。違いがあるとすれば、「ボコ・ハラム」はイスラム教への献身を要求する一方、中国共産党政権は共産党政権への回帰を主張せず、孔子の中国伝統的文化への教育を要求している点だろうか。
主張の一貫性という観点からいえば、「ボコ・ハラム」の方が一貫性がある。「西洋文化は罪」だから、「イスラム教へ回帰せよ」というわけだ。一方、中国共産党政権は本来、「共産主義に戻れ」と叫ぶべきだが、大多数の国民は既に共産主義になんら未練も憧れも有していない。欧米文化の悪影響から国民を守る防波堤として共産主義はもはや役に立たないことを共産党政権自身が熟知している。そこで、「共産主義に帰れ」ではなく、共産化前の偉人を呼び起こし、「孔子に帰れ」と国民に愛国主義を訴えているわけだ。共産党政権が孔子の教えを宣教すること自体、自家撞着もいいところだ。
幸い、「ボコ・ハラム」の主張とその蛮行はナイジェリアの大多数の国民の支持を得ていない。同じように、中国共産党主導のクリスマス禁止令は国民から反発を受けているだけだ。
「大紀元」によると、「中国ではクリスマスが大規模な商戦となっている。小売業者らは12月下旬、年間最高の売上を記録している。ほぼすべてのオフィスビルやショッピングセンター、高級住宅でもクリスマスツリーやクリスマスの飾りで盛り上げている。全国各地の店舗で、『ジングルベル』のメロディーが流れている。中国のソーシャルメディアでも、『メリークリスマス』の挨拶は友人の間で飛び交っている」という。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年12月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。