非正社員に日本の未来がある

池田 信夫

竹中平蔵氏が朝まで生テレビで「同一労働同一賃金をめざすなら正社員をなくそう」と言ったことが批判を浴びているが、これは彼が正しい。Economist誌は「オンデマンド経済の到来」と題して、雇用の将来を特集している。


ITの進歩によって、雇用形態はこれから大きく変わる。特にモバイル端末によって、1日中オフィスにいる必要はなくなった。これからは金があって時間のない人と、その逆の人が時間と金を交換する時代になる。その先駆がUberだ。すでにサンフランシスコでは、リムジン・サービスよりUberの売り上げのほうが多くなった。

マルクスが階級闘争の原因としたのは、生産手段をもつ者ともたない者の差だったが、ITはその差を急速になくしている。多くのユーザーのもっているスマートフォンは、20年前には大企業の大型コンピュータ室にしかなかった生産能力をもつ設備なのだ。

この意味で非正社員が4割に近づいている日本は、世界のトップ・ランナーになれる可能性がある。「正社員」が過剰に保護されているため、業務を脱熟練化した結果、日本の外食・流通の労働生産性は大きく向上した。それを「ブラック企業」などと呼ぶのはナンセンスで、労働者がブラックな企業から自由に動ける制度をつくるべきなのだ。

竹中氏のいうように正社員というシステムを廃止し、すべての労働者が自由に働ける社会にすることが、Uberのような大きなイノベーションをもたらす。派遣法の改正で3年以上の雇用を一律に禁止しようとする政府にも、その改正そのものに反対する野党にも、日本経済の未来が見えていない。