起業している人も会社勤めの人も新たな一年を迎え、「今年はやってやるぞ!」と意気込んでいる方も多いのではないかと思います。私も昨年末で大きな区切りをつけましたので今年は新たなる路線を進んでいくことになります。
では、どうやったら成功に導けるのでしょうか?
もちろん普遍的な答えなどありません。ただ、外的な環境を把握しておくという事は大切ではないでしょうか? 私はことあるごとに俯瞰という言葉を使いますが、それは自分が月に立って地球を見ているイメージを持とうとしているのです。そうすると日本どころか太平洋もアメリカもヨーロッパも小さく見えます。その中で力がどのように流れているのか、世界のトレンドはどうなのか、安泰なのか、不安要素があるのか、これを見るようにすると案外、自分の立ち位置もよく見えることがあります。
また、消費者の行動はどうなのか、お金はどう使われているのか、新製品に対する反応はどうなのか、などを探っていくと一定の傾向は見えやすいかもしれません。特に日本の場合、ほぼ単一民族という特性のため、一つの方向に向きやすく、また冷めやすいため、その習性をよくつかんでおく必要があるかと思います。
日経ビジネスにパイオニアがDJ機器と音響機器部門を売却し、カーエレクトロニクスに経営資源を集中させるという記事がありました。普通に読み流せばパイオニアもか、とぐらいにしか思わないと思いますが、私はこれを読んだ時、おもしろい選択をした、と感じました。カーエレクトロニクス、つまり、カーナビとカーステレオでありますが、自動運転の時代があと10年以内に幕開けするならばカーナビは不必要になります。では音楽。これは今や、スマホの音楽をクルマでどう再生するか、それだけのことであります。
ならばなぜ、カーエレクトロニクスなのでしょうか?
それはIoT(インターネットオブシングス)が期待される今日において車の情報収拾とスマホとの接続がIoTでは先行するのではないかと考えられています。とすれば、音楽情報のみならず、道路情報も車の状況、気象状況もすべてが一つのテーブルの上に乗り、その上で目的に合わせて最適選択を選んで指示してくれるのもコンピューターであります。運転者は何ら、画面から判断することはなくなる時代が自動運転の前にやってくる可能性があります。つまり、運転者はより運転だけに集中できる安全性を追求できる時代がもうそこまで来るということです。雑誌の記事にはそんなことは全く触れていませんが、仮にパイオニアがそこを考えているならこの会社は全く違う会社になる素地があると思っています。
私は日本と北米のビジネスを至近距離で見、感じながら、どちらのビジネスがやりやすいかといつも思うことがあります。答えを言うと一度軌道に乗せれば北米の方が絶対に楽であります。理由は競合が少なく、割とコンサバであり、利益率もはるかに高いものが期待できます。日本は品質競争とたゆまぬ改良、価格もギリギリ勝負が続き、余程、特化して競合相手が追い付けないビジネスをしなくてはいけません。
私の知るある上場会社の社長は絶対に真似できないビジネスを標榜し、その世界では独走しています。不動産のリノベに賃貸と転売を組み合わせたビジネスでありますが、なぜ真似できないかといえば規模であります。つまり、5件やって1件不良資産を抱えるとそれは20%になりますが、5000件やって10件なら0.2%です。彼は統計的リスク度合いを把握しながら誰も追いつけない規模でリスクを最小限にするといういわゆる「頭の良さ」でしっかり稼いでいます。
では我々は経営資源を一つに突っ込んで勝負するのが正解なのでしょうか? 私はそれはその人のビジネスのスタンスだと思います。行列のできるラーメン屋さんが2店目、3店目を作った途端、失敗したという話は目線が届かないだけでなくラーメン屋のオヤジから経営者になりそこねたということでしょう。
日本は流行のサイクルが速い中、その流行を追う仕事をするのか、新しいサイクルの先手を打って出るのか、はたまた流行にとらわれない仕事をするのか、更には両方組み合わせるというのもありでしょう。
私が務めていた建設会社は建設業とホテル業を社業の双璧にしていたのですが、その理由はお分かりになりますか? 当時、建設業は顧客からは手形サイトが長いものを代金として受け取っていました。酷いのは6か月なんていうのもあったのです。一方労賃はすぐ払わなくてはいけないからキャッシュフロー管理が建設業のキーだったのです。そこにホテルという現金商売の組み合わせが財務的見地からも実にうまくワークすると考えられたのです。
つまり、組み合わせビジネスにより補完関係を作るという事もあるでしょう。
羽ばたき方はいろいろあります。社会環境、経済環境、経営環境をよく見て最適選択することが重要です。そしてそれよりもっと大事なのは仮に成功しても絶対に胡坐をかかない、そしていつも初心を忘れずに努力し続けること、これが勝利への道ではないでしょうか?
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2015年1月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。