本家本元、バイロン・ウィーン氏の2015年ビックリ10大予想 --- 安田 佐和子

アゴラ

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お待たせしました。ブラックストーン副会長のバイロン・ウィーン氏による「2015年版ビックリ10大予想」をお届けいたします。

2014年版はこちら。前半が割合当たってた割に後半が残念な結果に終わり、ざっくり2勝2分けとそこそこでしたね。

では、今年の予想をみてみましょう。

1. Fedの第1弾利上げ、2015年半ば以前に開始へ

→雇用指標が改善し、強い成長率に支えられ2015年半ばより利上げ前倒しへ。しかしタイミングを誤り、短期的な景気鈍化を迎え株式は調整入り。長期金利は低水準を維持しイールドカーブはフラット化する。

2. サイバー攻撃が悪化

→個人や企業問わずハッカー攻撃は止まらず、Fedをはじめ中銀は取引確認作業のため5営業日にわたる取引停止を余儀なくされる。政府機関も、攻撃の魔の手から逃れられないだろう。

3. 米株ラリーは2015年も継続

→住宅投資、設備投資、好調な決算を追い風に強い経済成長を謳歌するため、S&P500は15%の上昇へ。主要国を中心にアウトパフォームする。

4. 欧州中央銀行(ECB)は国債・住宅ローン担保証券、社債を買い入れへ

→ドラギECB総裁は広範に及ぶ量的緩和(QE)を決断するが、欧州は深刻な景気後退入りへ。ドイツが特に主要な貿易パートナーの需要減速を背景に、輸出面で大きな打撃を受ける見通し。ユーロ圏の政府は財政支出拡大を通じた選択肢を採用できず欧州株は下落し、それぞれの政府は危険なまでに右傾化が進む。

5. 日銀による「衝撃と畏怖」、2015年は影響力喪失

→異次元緩和の効力は失われ消費税増税見送りも空しく、に2014年7-9月期に始まった景気後退は2015年全般も継続。日経225は円安が対ドルで進みながら、横ばいで推移へ。

6. 中国の成長率、7%割れへ

→財政・金融刺激策を投入しても7%成長は不可能となり、ハードランディングを回避する意味でもせいぜい5%成長止まりとなる見通し。信用に基づいた国営企業投資あるいは国営インフラ投資に依存するのではなく、経済成長の軸を消費者へシフトさせる必要性を認識していく。インフラ整備は住宅や道路から、大気汚染や水道に振り向けられる。雇用の伸びが減速し抗議活動につながるものの、過剰な暴力行為は抑制される。

7. 原油安がイランを直撃、原子力開発を停止へ

→経済制裁に加え原油安の憂き目に遭い、イランは景気悪化に喘ぐ国民からの要請もあって核開発停止を余儀なくされる。ニュースを受け、中東地域の株価は一時的に上昇へ。

8. ブレント原油先物は40ドル割れへ

→ブレント原油先物は上半期を通じ下落を続け、40ドル台に突入へ。深刻なダメージに悩むロシアはウクライナと平和協定を締結し、東ウクライナの自治権を承認する。プーチン露大統領は経済回復を目指し国際社会への復帰を目指すが、ロシア国民はついに見放し支持率は急低下へ。年末には辞任に追い込まれる。一方で原油先物は下半期に持ち直し、エマージング諸国の需要を背景にWTI原油先物とブレント原油先物はそろって70ドル台を回復する。

プーチン大統領が玉座から引きずり降ろされるとは、大胆な予想ですね。

Vladimir Putin, Grand Kremlin Palace, 12/12/13

(出所:Ria Novosti/Reuters)

9. ハイイールド債と米国債のスプレッドは縮小へ

→原油安の加速を受けた2014年末ハイイールド債の下落は、絶好の買い場となる。米国債とのスプレッドは半分へ縮小し、米経済の視界にリセッションの影が一切差さないなかで、ハイイールド債はベスト・パフォーマーとなる。

10. 共和党、多数派の威力をフル活用

→共和党は米上下院で多数派を獲得してからは、法案可決へ努力する。キーストーン・パイプラインは遂に承認され、一部の税制変更や移民制度改革も可決へ。2016年米大統領選でのヒスパニック票田確保をねらい、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事を共和党の大統領候補へ押し上げていく。

その他の「起こりうる」予想は、以下の通り。

11. 水こそ、環境問題のセンターステージへ

→米西部からインド、中国まで水不足が深刻化し二酸化炭素問題より重要視される。

12. インターネット、アプリを通じたサービス業が問題に直面

→ウバー、エアビーアンドビーなど、税制など当局による規制・干渉を受け業績悪化へ

13. ブラジル経済が予想外の好転へ

→第2次ルーセフ政権は社会主義よりの政策を捨て、ビジネス寄りの政策を打ち出し成長と株価の回復につなげる。

——いかがでしたでしょうか。長期金利が低下しイールドがフラット化するとの予想は、新債券王のこの方と一緒でしたね。2014年に続き、S&P500が15%の上昇を演じるとの見方は、著名ストラテジストの予想を遥かに超える楽観ぶりです。日本については、日経平均が横ばいに終わると残念な予想でした。サイバー攻撃の悪化といえば、すでに2013年のホリデー商戦から進んでおり、2014年末は映画「ザ・インタビュー」が仇となりソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントが被害に遭いヘッドラインを次々に飾る始末。2015年の船出が荒れ模様だったように、今年もいろいろ起こりそうであります。

(カバー写真:Bloomberg)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年1月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。