金のタマゴ「香港」の首を絞める中国 --- 井本 省吾

アゴラ

宮崎正弘氏がメルマガ「国際ニュース・早読み」1月13日付けで、立て続けに2つの香港問題を取り上げている。

1つは

<自由言論の闘士、ジミー・ライ(黎智英)よ、何処へ行く
香港にささやかに残った「言論の自由」もなくなってしまうのか?>

ジミー・ライは香港の民主化運動「雨傘革命」を全面支持、資金面でも運動を大々的に援助、デモ行進でも先頭を歩き、逮捕された(12月3日に釈放された)。


ライ氏は12歳の時に広東省から香港に渡り、苦学して留学、香港でカジュアル衣料「ジョルダーノ」を立ち上げ、大企業に高成長させた。ユニクロを展開しているファーストリテイリングの創業者、柳井正氏(会長兼社長)はライ氏の経営とビジネスモデルに触発され、ユニクロの経営を始めたという。

ライ氏は経営者であるとともに、言論の自由と民主主義の信奉者だった。ジョルダーノで築いた資金で日刊の「りんご日報」を創刊、グラフィックを主力に新鮮な紙面作りもあって、人気を博した。

だが、その果敢な報道ぶりに中国共産党はジミーと「リンゴ日報」を目の敵にした。ジョルダーノの広東の店に放火するなど圧力をかけ、ジミーの自宅には火炎瓶が投げ込まれたこともあったという。

ライ氏はこれらの圧力、脅威にひるまず、ジョルダーノを手放して、むしろリンゴ日報の経営に専心したが、雨傘革命で逮捕された責任をとってリンゴ日報の社長を辞任した。「それでも個人的に民主化運動をささえる」と記者会見で語っている。

もう一つのメルマガでは香港の最大財閥、李嘉誠が香港から逃げ出そうとしている、と報じている。

<(李嘉誠氏は)すでに大陸に投資したショッピングモールや「北京の銀座」といわれる王府井の複合ビルなど主要な不動産を2012年までに静かに売り抜け、その額は700億香港ドル(邦貨換算1兆円強)に達している。かわりに李嘉誠がのめり込んでいるのはロンドンでの高層マンション団地開発など、大半が欧州ならびにカナダである>

宮崎氏は「(李嘉誠氏は)香港籍をはなれて一気呵成にグルーバル企業として生まれ変わり、中国共産党の支配する香港を離れる狙いがある」と分析する。

2つの記事から垣間見えるのは、中国の全体主義に支配され、自由が抑圧される香港の未来だ。ジミー・ライ氏や李嘉誠氏のような金のタマゴ(強力な経済)を産むニワトリの活動の自由を奪い、他国に追いやる国家の未来は暗い。

宮崎氏が1996年に香港でジミー・ライ氏にインタビューしたとき、ライ氏は言論の自由と香港の未来に関し、流暢な英語でこう言ったという。
 
<私はハイエクの信奉者。香港は国際金融のメッカ。つまり国際金融センターを今後も機能させようと中国共産党が考えるのであれば、(いくぶんの制約はあるかも知れないが)香港から言論の自由はなくならない。なぜなら市場というのは情報の透明性、その正確さによって成立するからだ」 中国経済の先行きに暗雲が漂っている。


編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2015年1月13日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。