普段は中国共産党政権の腐敗や人権蹂躙問題を厳しく追及している海外反体制派メディア「大紀元」は1月22日、日本人2人がイスラム過激組織「イスラム国」(ISIS)に人質となり、身代金を要求されているが、日本のネットユーザーは日本人2人の殺害予告映像をアニメやイラストに加え、滑稽な加工画像を作成して公開していることについて、「日本人は平和ボケだ」といった軽蔑まじりの嘲笑が飛び出していると報じた。
「過激派組織イスラム国は、日本人2人の殺害予告映像をインターネット上に公開した。緊迫した状況であるにもかかわらず、この映像を日本のインターネット利用者はアニメやイラストを加え、滑稽な加工画像(コラージュ画像)を作り次々と公開した。あまりにも不謹慎な行為に中国のインターネット利用者は日本の『平和ボケ』を指摘。またISISに関係するとみられる者からは怒りを買い、一部から報復攻撃を示唆するメッセージが発せられ、深刻化を招きかねない事態となっている」
大紀元は日本ネットユーザーに対して、「平和ボケ」、「不謹慎」、「冷静で無関心」といった中国側のユーザーから批判の声を紹介している。
中国側のネットユーザーは過去、日本に対して厳しい批判や罵声を浴びせてきた。けっして優等生のユーザーではないが、その彼らが2人の日本人人質に対する日本ネットユーザーの反応を「不謹慎」と感じているわけだ。もちろん、人質事件は生命にかかわる深刻な出来事だ。普段は冗談半分で無責任な批判を繰り返してきた中国ネットユーザーも好ましくない批判のトーンを抑えるなど、それなりの自制を働かしているのかもしれない。
日本人は戦後、繁栄と平和を享受する一方、安全問題は米国に“おんぶにだっこ”といった環境圏で生きてきた。そして米国即製の平和憲法を自国のアイデンティティと受け取り、生きてきた。そのような中、日本の平和ボケを指摘する声が保守派論客から聞かれだして久しいが、日本と対立している中国のネットユーザーの目にも「日本人は平和ボケだ」と映っているのだ。日本人として真剣に考えなければならない時だ。
それでは、どうしたら「平和ボケ」から解放され、自国の安全問題に責任をもって対応できる国家となれるだろうか。憲法改正は中心的な課題だが、自主憲法を作成しただけで即、国民が「平和ボケ」から目を覚ますとは思わない。憲法改正作業以上に国民の意識改革のほうが難題だろう。
安倍晋三首相は16~21日までエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区の4カ国・地域を訪問した。その途上、2人の日本人の人質ニュースが飛び込んできたわけだ。首相は中東の現状を一層、身近に感じられただろう。
中東地域から数千キロ離れた日本人にとって、中東の現状を身近に感じることは難しいが、日本を取り巻く周辺を振り返れば、日本の安全が危機状況下にあることは理解できるだろう。尖閣諸島問題などで反日攻勢をかける中国、核兵器を有する北朝鮮など、日本の安全を脅かす問題が山積している。中国のネットユーザーから「平和ボケ」と馬鹿にされないためにも、「国の安全」は国民一人一人の死活問題だ、と自覚したいものだ。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。