イスラム国が日本人2人を人質に取り殺害予告をしてから早くも5日間が経過しようとしていますが、いまだに解決の糸口が見えません…。それどころか、うち一名はすでに殺害されているとの情報すらあります。
そんな中、イスラム国の要求が2億ドルの身代金要求から、囚人となっているテロリストの解放(人質交換)へと変わってきています。これに対して、
「どうしてそんな簡単なことができないのか!」
「今すぐ政府は人質交換に応じるべきだ!」
という論調が思ったよりも多いので(思ったよりは、程度ですが)、なぜそれが望ましくないのか・不可能なのかを簡単に書いておきます。
一たびテロリストの要求を飲んだり譲歩したりすればその行動はエスカレートし、全世界の日本人や日本企業がテロの対象になるというのは、もはや改めて指摘するまでもない前提です。
さてその上で、今回イスラム国が人質交換の相手として求めているのは、2005年に60名もの死者を出すテロ事件の当事者で、ヨルダン政府によって死刑判決を受けて収監されているサージダ・リーシャーウィー。
これが何を意味するかというと、日本人の命とヨルダン人の命を天秤にかけているわけです。
ヨルダン国内で大量無差別殺人を行ったテロリストを、「日本人の命のために」解放したとなれば、まずヨルダンの国内世論が黙っていません。
それだけではありません。自由の身となった彼女は、再び活発なテロ活動に身を投じて、また多くのヨルダン人が犠牲になるかもしれません(その可能性は非常に高いでしょう)。
もちろん、「人質交換」に国家が応じるケースもあります。日本ではあの「よど号ハイジャック」で収監中の連合赤軍メンバーを解放しました。しかしこれはあくまで、日本国内・日本人同士の問題でした。
一般的に人質交換が最後の切り札として成立するのは、その国家にとって極めて重要な要人が人質に取られている場合だそうです。
そして実際、ヨルダン政府はイスラム国に現在も囚われている要人、ムアーズ中尉を開放するために、前述のテロ犯人との捕虜交換交渉をしていると言われています。
その状態で「日本人の人質」との交換が成立してしまったら、ムアーズ中尉の命は逆に窮地に立たされます。これもまた、ヨルダン国内を揺るがす大きな問題となるでしょう。
「人ひとりの命は、地球より重い」
「お互いに人間を解放するだけなのだから、可能ではないか」
そのように考えることもできるのですが、こと今回の要求内容を見るとこれは外交問題に直結する事態であり、単純に「命」の問題と割り切れないのは確かなのです。
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と、ここまで書いたところで、前衆議院議員の三谷英弘さんも同じようなことをブログに書かれておりました。その前の記事も興味深いので、合わせてご一読ください。
『変更されたテロの「要求」は呑めるのか。』
⇒ http://amba.to/1ygsvXD
『なぜ日本がISの戦いに巻き込まれたか。』
⇒ http://amba.to/1BcxJrO
いち地方議員である私には残念ながら、今回の事態にできることは何もありませんが、日本政府の全力を挙げた対応と解決を心より祈りたいと思います。。
それでは、また明日。
おときた 駿
◼︎おときた駿プロフィール
東京都議会議員(北区選出)/北区出身 31歳
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンで7年間のビジネス経験を経て、現在東京都議会議員一期目。ネットを中心に積極的な情報発信を行い、地方議員トップブロガーとして活動中。
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編集部より:この記事は都議会議員、おときた駿氏のブログ2015年1月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださったおときた氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。