この記事は、日本時間の2月2日月曜日にNHK-BSで放送されるアメリカのアメリカンフットボールNFLの決勝戦、スーパーボウル(サッカーワールドカップと並ぶ世界最大級のスポーツイベント)を、アメフトなんて全然興味ないし何にも知らないあなたもそれなりに楽しんで見るためのガイドです。
前・中・後編になっていてこれは中編です。前編はこちら。
全体の目次は
1・スーパーボウルを見るとこういう良いことがある!
2・ルールの簡単な説明(ほんと簡単に)
3・アメフトのプレイスタイルの変化とグローバリズム
こう↑なっていて、1が前編、2が中編、3が後編になります。今回は、単純に「アメフトのルールを全然知らない人」がとりあえず放送を見てちゃんと理解できるようになるための、超簡単なルールの説明です。
2・ルールの簡単な説明(ほんと簡単に)
アメフトってクォーターバックってのがいて、そいつが凄いエライんでしょう?
というイメージぐらいは私も最初から持ってました。
私が好きなアメリカの作家「マイケル・ルイス」は子供時代野球をやっていて、幸せの隠れ場所というアメフト映画の原作になった作品ブラインド・サイドを書いた時に、「アメフトで一番給料が高いのはクォーターバックなんだけど、次がレフトタックルらしい。レフトタックルってどんなポジションなんだ?」という疑問から調査をスタートしたと言っていて、アメリカ国民の36%の人間が見るのが好き・・・って言ってる割には、細部まで完璧にわかってる人間はアメリカ人でも多くないのかもしれないな・・・と思いました。(だからニワカでも楽しめるはず!)
アメフトは、時計が止まるスポーツです。毎回敵味方ともに陣形を整えて、はいスタート!ってなってから、真ん中に位置してるクォーターバック(以下QB)にパスが投げられる・・・そこからスタート。
QBはボールを受け取ってから、それを味方にパスするか、あるいは時に自分が走っちゃうかして、タックルで潰されるまで敵陣に前進させます。タックルで潰されたり両サイドのラインから出たりするとそこで時計が止まって仕切り直し。前進したら、グラウンドがシマシマの目盛り状態に塗り分けられている中で、「何ヤード進んだ」というところから再開になります。
攻撃側は基本的に4回チャレンジできるんですが、その間に10ヤード前進できればもう一回攻撃権が更新されます(”ファーストダウン更新”という)。更新されないとその位置から敵の攻撃が始まる。(4回めの攻撃になっちゃうと、それ失敗するとそのあんまり攻め込めていない位置から反転して敵の攻撃になってしまうので、そのままプレーしないでバーンと敵陣の奥に蹴りこんでしまうのが通例なんですが、それをあえてやらないでリスクを犯して通常プレーをもう一回試みることを”フォースダウンギャンブル”といいます。)
で、それを繰り返しながら相手のゴールラインを超えるところまで運んだら得点。
見ていてテンションが上がる見せ場は、
・メジャーリーグの上原浩治選手のマウンドさばきみたいなスピード感で短いパスがバン、バン、バン!って(ラン攻撃も織り交ぜつつ)通っていって「え?もうこんなに進んだの?」っていうような展開になった時。
・ラン攻撃専門の選手が、並み居る大男どものタックルをかわしながら、お?お?お?お?おおおおおおお!ってなってフィールド8割ぐらいを独走するシーン。
・たまーにある、QBなかなか投げないな・・・粘るな・・・と思って見てたら、その間にレシーバーの選手が敵陣奥深くまで入り込んでて、そこにドッギャーン!ってフィールドを半分ぐらい一気に進んじゃうようなロングパスが通るシーン。
みたいなのが代表的で、特に最後の方で試合があと何秒で何点負けてて、これで勝つにはタッチダウンが必要だけどまだ自陣の奥深くに押し込められてる・・・ってところから、上記3つのプレーが連続して実現して残り1秒でタッチダウン!とかがわりと普通にあったりするのが醍醐味かもしれません。
サッカーだと、そういうのは「奇跡的な一試合」にだけ実現して、そうじゃない時は残り時間少なくなったらまあダラダラと時間稼いで終わりにしましょうか・・・てなりがちなんだけど、その辺アメフトは「わざとギリギリの駆け引きになるように」人工的なルールで縛りまくってるところが、良さであり初心者にとって入りにくさでもある・・・って感じですね。
・・・と、これぐらい把握しておけば、あとはまあ、3時間以上もあるんで、見てるうちにだいたいわかってきます。詳しいルールはスマホ検索したら沢山でてきますし、NHKの日本語解説は凄く親切で、はじめて見た人でもだいたいわかるように説明してくれるので安心です。
で、既にちょこちょこ書いてしまいましたが、「プレイスタイルの変化」という本記事のテーマでいうと、このQBのキャラクターが時代とともに随分変わってきているんですね。
ところで一個だけ余談なんですが、南アフリカ人の黒人ハーフのコメディアン、トレヴァー・ノアという人がアメリカ黒人の真似をする・・・というスタンダップコメディがユーチューブで見れるんですが(めちゃ面白いです)、そのロングバージョンの中に「アメリカのスポーツ中継」というネタがあって、イギリス連邦出身の人間の目から見ても、アメリカのスポーツ中継はずっとアナウンサーが「人名!数字数字数字数字数字!人名!数字数字数字数字数字!」って叫んでいるように聞こえるそうです(笑)
アメリカのスポーツはそういうところが完全に個人の数字になるように設計されていて、また見ている方も数字に物凄いこだわってる文化があります。アメフトを見ているとそれが物凄く感じられる。サッカーみたいにゴールやアシストには数えられないけどナイスプレーだったみたいな世界が可能な限り排除されている。
誰がシーズンに何ヤード走った、何ヤードパスを通した・・・っていうのが全部出る。何回タックルでQBを潰したかとか。そういう部分で不確定要素ができるだけ無いように設計されてるんですね。サッカーに比べれば個人成績が明確な野球ですら、アメフトに比べるとまだ曖昧なところがある感じで、だからその空隙を埋めたいがためにセイバーメトリクスという「野球のデータ化」に熱中するアメリカ人たちがいるんだと思います。
アメフトを見ていてなんとなく目につくのは、ワンプレーが終わった後選手がボールをすぐに「ポイッ」って捨てちゃうんですよね。それは審判がそれを持ってジェスチャーするからでもあるんですが、サッカーだと笛が吹かれて試合が止まっても、どっかで勝手に知らないうちに再開されてフリーキックで蹴りこまれちゃったりするんで、「相手が勝手なことしないか」を常にちゃんと見張ってるような気配があるんですが、アメフトにはそういうのが全然ないんですよ。
その、「信頼してポイッと捨てられる感じ」「自分の行動は全てちゃんと数字に評価されるという感覚を全身で信頼している感じ」・・・っていうのが、アメフトを見ていて「こういうのがアメリカ文化なんだなあ」って私が思う地味なポイントです。
はい、余談終わりです。では次回はQBのプレイスタイルの変化と時代の変化・・・の話の続きをしましょう。
長くなってきたのでアゴラでは分割掲載しています。一気読みしたい方はブログでどうぞ。
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今後もこういう「アメリカの時代の終焉」と、その先にある『グローバリズム2.0』の世界における日本の可能性・・・といった趣旨の記事を書いていく予定ですが、更新は不定期なのでツイッターをフォローいただくか、ブログのトップページを時々チェックしていただければと思います。
倉本圭造
経済思想家・経営コンサルタント
・公式ウェブサイト→http://www.how-to-beat-the-usa.com/
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