本当に増え続けるのか、訪日外国人 --- 岡本 裕明

アゴラ

訪日外国人は2013年にようやく1000万人を超えたと思ったら2014年には1340万人と更に3割も増え、2020年までに2000万人という目標にグッと近づいたように感じます。しかし、私はこのままでは近い将来、頭打ちになる可能性があり、案外、2000万人は遠い目標ではないか、という気がしています。


カナダから日本に向かう航空機。その昔はカナダドルが円に対して安かったこともあり、航空機にカナダ人らしき姿は僅かでした。が、このところ、確かに増えました。為替の影響は大きいという事でしょう。となれば、為替のことは為替に聞けですから仮にこの円安が何らかの理由で反転したり、当該国の通貨が安くなるような事態(カナダドルは対円で1か月で1割以上下がっています。)が続けば折角の訪日外国人も安定しないという事になります。

政府は外国人向けビザの緩和などで窓口を広げ、アクセスのしやすさをアピールします。羽田の国際線化も大きな役割を果たしています。ラーメンといった日本食やアニメなどを通じた外国での「新日本文化」の伝播は若い人たちに魅力的に映ることかと思います。

考えて見れば「寿司 フジヤマ 芸者」だった数十年前のイメージから「電気の秋葉原」が加わり、最近は「オタクの秋葉原」に変貌し、「買い物天国の日本」でデパートが潤い、グルメな食に舌鼓を打つ時代になりました。更に食やトレンドばかりではなく、文化遺産や観光ガイドに載らない(あるいは日本人が注目しないような)観光地や体験型のエンタテイメントに外国人が溢れることもあるようです。知床や河口湖あたりは外国人観光客のバスがひっきりなし、明治神宮にいけばその外国人の多さにびっくりすることでしょう。

これら観光客の増加は日本への理解の浸透と共にもっと長期に滞在したい、日本を勉強したいという動きにつながるものです。日本が門戸を開き、移民を受け入れるべきかという話題が盛り上がった際、私はそれ以前に門戸を開いていも外国人が来ない実情がある、ということを書かせていただきました。日本には観光には来たくてもずっと住みたいと思う国ではないのであります。

それは日本に外国人を受け入れるマインドがまだまだで、居心地の悪さの問題がひとつ、更には社会インフラの整備が足りないことも上げられましょう。

長期滞在目的の外国人が最も困るのが住むところだと思います。不動産を借りるには家賃が払える保証人を立てなくてはいけません。しかし、外国人の場合、それがほぼ不可能であり、入り口ではねられてしまいます。私の場合、外国人の居住交渉についてはクレジットカード番号を頂くことで保証の代わりにさせてもらっていますが、ひとによってはそのクレジットカードすらないのであります。このあたりになると現在、個別対応をしておりますが、不動産屋を介す一般の大家さんには非常にハードルが高いものになってしまいます。

学校、教育も一つのハードルでしょう。移民国家カナダの場合、英語を母国語としない生徒はESL(English Second Language=英語が第二外国語)のクラスが完備され、一般のカナダの生徒とは別プログラムがあり、早く英語に慣れるような仕組みがあります。日本では少子化で学校がどんどん閉校されていく中、思い切ってそんなプログラムを提供すれば外国人家族には非常に受けるでしょう。(ただし、周辺住民には複雑な思いとなるでしょうが。)

政府の訪日外国人を増やす政府のプロモーションはVisit Japanというプログラムのもと、日本政府観光局が日本の観光魅力を海外に広報・宣伝し、訪日外国人旅行者の増加を目指すというものです。これを読む限りあくまでも観光客という見立てですが、そんな都合のよいプロモはあり得ないのであって移民、長期、中期、短期がうまく歯車のように組み合わさることでその国への魅力が増し、安定した訪日外国人の増加を促すものです。

その点、政府がどこまで本気なのか、推し量りくく、もっとビジョンをはっきりさせることが今後、求められることになるのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2015年2月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。