万年野党化の道を進む民主党 --- 井本 省吾

アゴラ

野党というものは気楽なもんだ、とつくづく思う。2人の日本人が過激派集団のISIL(「イスラム国」)に殺害されたことから、安倍首相の中東歴訪時に「ISILのテロの脅威を食い止めるために2億ドルの人道支援をする」と語ったことがテロ集団を刺激した、ISILのテロに対する警戒、防備が甘すぎたと民主党などが国会で非難している。


「2人の日本人が拘束され殺害の危険にさらされていたのだから、慎重にすべきだった」。4日の国会質疑での民主党の細野豪志、辻元清美両議員など典型的である。

「ISILを名指しせずに、中東避難民の生活支援だけをそっと語れば、テロ集団を刺激せずに2人の日本人が殺害されることはなかった」と言いたいのである。

まさに、演説の言葉の揚げ足取りだ。日本政府はこれまでも国連などの場でISILの行為に反対する立場を明らかにしてきた。そのどれであろうと、ISILは言葉尻をとらえて日本に難癖をつけ、身代金要求に結びつける可能性はあった。
 
前回も書いたが、拘束された日本人がいようといまいと、後から日本人を拉致して身代金要求に結びつけるかも知れないではないか。

ISIL批判をしない方がいいというのは、暴力団の報復を恐れて何も文句を言わない方が良い、闘う姿勢を示すとトバッチリを受けると言っているのと同じである。

テロ集団を刺激する危ない演説は米国や英国、それにヨルダンなど周辺国にまかせ、日本は黙っていた方がいいという態度だ。

こういう議員が中枢を占める政党に国政は任せられないと改めて思った。
 
私は日本憲法は改正すべきだと思い、安倍首相もその方針だが、次の憲法の前文には(文章を改めるかどうかは別として)賛成である。
  
<われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、……(それは)自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる>

ISILの行為は、まさに専制政治のもと地域住民に隷従、圧迫、恐怖を強いるものである。それは地上から除去すべきであり、各国はそのために努力することが大事である。

「ISILなどのテロ集団とのあからさまな対決は米英にまかせ、日本は避けた方がいい」などという消極的な態度は「自国のことのみに専念して他国を無視する」姑息で卑劣な姿勢だと国際社会で批判されよう。
経済大国たる日本は国家としての責務を果たし、国際社会で名誉ある地位を占めたい。安倍首相はそうした考えのもとで中東で演説し、人道支援を決めたはずである。

むろん2人の日本人の殺害事件を防げなかったことは極めて残念である。安倍首相もその思いだろう。だが、100点満点の外交、政治は不可能に近い。自動車事故はゼロにするのが理想だが、だからといってゼロにできるまで自動車の生産、販売、運転を全面的に中止することはできない。それと同じである。

民主党は事故がゼロになるまで、自動車運転を中止しろと言っているようなものだ。

民主党もそのことはわかっていよう。それでいながら、党利党略のために、100点満点でなくてはダメだと安倍政権を批判する。もう少し成熟した議論はできないのか。海外邦人の安全体制確保のためにこうすべきだという生産的で具体的なアイデアを示して、安倍首相を追及するとか。

そうすると特定秘密保護法の整備や集団的自衛権の行使容認ということになり、冷厳な国際政治を認識できていない今の民主党では無理か。いずれにせよ、今のままでは、民主党の万年野党化は避けられまい。


編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2015年2月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。