月に一度の経済雑感はアメリカ雇用統計の発表に合わせて経済の話題を中心に書かせていただいています。
きょう発表されたアメリカの1月度の雇用統計も絵に描いたような回復ぶりを示しています。ネットの雇用増は25万7000人となり事前予想をも上回りましたがここまで順調になるとそうであることが当然であるという市場の反応が見て取れます。ダウの反応が鈍いのは前日までの上昇が大きかったこともありますが、それ以上に雇用統計にサプライズ感がないことが大きいのでしょう。
ちなみに失業率が5.7%と1ノッチ悪化しています。日経には景気回復による求職者の一時的上昇と解説されていますが、そうではなく失業率の計算方法を変えたからであります。分母になる労働力の算出基準が変わったため労働力が約70万人増加する結果となっています。ちなみに分子も同様の見直しあったため、労働参加率も2ノッチ改善することになりました。まさに統計のマジックという事です。ただ、大勢には変化はありません。
賃金は0.5%上昇で前月までの下落傾向に歯止めがかかり、こちらもほっとしているところでしょう。
ただ、敢えて言うなら、リテールセクターと石油掘削関連の雇用には引き続き不安感が台頭しており、特に石油掘削関係の労働者は5ケタのレイオフの可能性も指摘されています。また、リテールの不安はクリスマス商戦が終わったこともあるのですが、私も気にしています。大手家電のラジオシャークが民事再生法を申請しましたがこれもリテールの不振を裏付ける一つとなるのでしょうか?ちなみにこのラジオシャークは家電というより秋葉原のオタク系電気店と言った方が正しく、白物家電や大型テレビが陳列されているわけでもありません。聞いたことのないブランドで今まで見かけたことのない主に音響関係の小物商品が主体で店員も実にオタクであります。
昨日、用事があり、夕方シアトルのアウトレットモールに行ったのですが、モールがここまで閑散としていると薄気味悪いという感じでした。各店舗、一組の客が入っていれば上等という状態のビジネスにこのモールも週末、アジア人とカナダ人のビジネスにフォーカスしないとやっていけないな、というのが実感です。そのカナダからもこの為替ではメリットが取れません。私の経験からは日本もそうですが、アウトレットにはパリッとした人はまず買いに来ないです。
さて、目を転じてギリシャ。チプラス首相がトロイカ体制をぶっ潰すと頑張っているようですが、私にはこの首相はパフォーマンスか無知か常識を逸脱しているとしか思えません。借り換え時期が2月末に迫っている中でECBとの信頼関係は完全に切れています。多分ですが、EUはこの首相をいかに分からせるか、劇薬を使うこともあり得るのではないかと思います。劇薬とは二者択一の究極の選択で言う事を聞かなければギリシャ国民が首相の態度で更なる苦痛が待っている、というスタンスであります。決してユーロから「さようなら」とは言わないはずです。それはさせる理由がないからです。債権者としては今までの貸しがユーロから外れてドラクマに戻されたらとんでもない損失になることがわかっているわけで誰が喜んで同意するでしょうか?どこの借金取りも嫌なものですが、欧米のそれだってかなりえぐいものです。
最後に日本ですが、決算発表もピークを過ぎつつあり、概ね順調で何よりだったと思います。今週はソニーのサプライズ決算発表で一時ストップ高をつけるという珍しい逆ソニーショックがありました。その陰で同じ日に決算発表した日立は悪くなかったにもかかわらず株価は期待を裏切ったとして10%も下落しています。
株価の反応は驚き感で刺激して短期で稼ぐスタンスが見えています。新興市場の株式においては一日の中で突然暴騰し30分、1時間後には暴騰劇を見せたと思いきや、その後一気に下げて終値は前日と大して変わらず、という現象がちらほら見て取れます。まさに株式投資がマネーゲームと化し、目先の利益だけにとらわれている悪性「インフレ」エンザにかかっているようです。
はっきり言ってこのような市場では健全な投資家を育成するには程遠い状況ではないでしょうか?東証のアローヘッドでスピード発注の時代を迎えた今、30年前に証券会社に電話して○○をいくらで指値といった時代の比較話をすることは禁物なのですが、大事なことは企業業績はアローヘッドのようなスピード感では変化しないということであります。ならば、投資家は刺激だけを求める快感に酔いしれているとも言えます。
株式掲示板のコメントはもはや動物の雄叫びとしか思えない訳の分からない擬態音だらけで人間のなすものとは思えません。逆に言えば平和な時代ともいえるのでしょう。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 「外から見る日本みられる日本人」2014年2月7日付より