世の中の不安材料はたくさんあるものですが、昨年世界の注目を浴びたウクライナも戦闘による疲弊がたたり、経済状況もいよいよここにきて不安感が増してきました。
同国はご承知の通り、政府側と親ロシア派との対立が続き、今年に入って更に激しくなっています。親ロシア派が押している状態のようなのですが、実態はよくわかりません。ただそのような陣取り合戦をしている間にウクライナの経済そのものが悪化の一途を辿り、デフォルトに最も近い国の一つとされています。
ウクライナの通貨、フリヴニャは12月には1ドル当たり9.45あたりをつけていたのですが、現在26にまで下落しています。中銀による買い支えを先週止めたことも大きく影響しているようです。2014年の同国のインフレ率は24.9%となっています。
また、同国の対外債務は170億ドル程度あるとされておりその返済計画が急務である中、アメリカがそのうち、20億ドルを債務保証することになっています。なぜ、アメリカがここまでウクライナに手を出すかといえばアメリカからの同国への投資が大きいからです。また、バイデン副大統領の息子も同国への投資企業の役員になっているはずです。同国が昨年ガタガタしている中で地政学的に遠い関係のアメリカがなぜちょっかいを出すのか、という理由の一つはその投資であったとも言えるのです。
その悪化の一途を辿るウクライナに2月5日、ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領がわざわざウクライナに赴き、ポロシェンコ大統領と会談、その後、二人はモスクワに向かい、プーチン大統領とウクライナ情勢について延々5時間も会談しています。一定の成果はあったとされ、メルケル首相がアメリカ、カナダに向かう今週の9日にオバマ大統領と本件も議題としてあげることになっています。その後11日にベラルーシでドイツ、フランス、ロシア、ウクライナの四者会談が予定されています。
そのあたりの動きから親ロ派も停戦に向けた一定の歩み寄りは期待できるとみられていますが、同床異夢であるともみられ、温度差をどう抑えるのか、このあたりがデフォルト回避には大きなキーとなるのではないでしょうか?
ウクライナ問題に端を発した欧米のロシア苛めは一定の成果はあったわけでプーチン大統領としても強硬な姿勢は取りにくいと思われます。一方でウクライナの生命線であるロシアからの天然ガスを止められたらウクライナは経済は完全に止まります。ロシアに対してその安定供給を求めているものの実際には支払いがきちんとなされていないとも言われ、それが正しいのならロシアの言い分も分からないわけではありません。払えないなら国土で払ってもらおう、と言われればどうなのでしょう。上述の通りアメリカだって自国の投資簿価を守るため、20億ドルの保証をするわけですからどっちもどっちであります。
ちなみに同国は腐敗が進んでいる国の一つとされ世界の腐敗度指数での比較では177国中144位で同国と同レベルの腐敗国はベネズエラやミャンマー、ロシアがリストされています。そんな国をどうやって信用し、支援していくのか、恐ろしいほど不安だと思います。
同国の外貨準備は既に危機ラインの輸入の3か月分を大幅に下回っています。よって、同国を救えるかどうかはメルケル、オランド、プーチン会談とメルケル、オバマ会談が一つのキーとなり、今週にその一つ目の山場を迎えるとみています。
ECBとしてはギリシャ問題も抱える中、ウクライナ向け融資をどうするのか、こちらも頭が痛いことになりそうです。
世界の歯車はあちらこちらでかみあいが悪く、軋んでいるようです。2015年の世界経済の予見は難しくて不可能と私は年初に申し上げましたが、今、一部の海外専門家も同様のコメントを堂々と出すようになっています。投資家が短期志向を強め、アメリカの国債が人気になる理由はこのあたりにも隠されていると言えそうです。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人2月9日付より