知財本部、集中検討課題と中長期課題の議論 --- 中村 伊知哉

アゴラ

知財本部 2014年末会合。
内閣総辞職の閣議と3次安倍内閣組閣とのわずかな合間に、山口大臣、平副大臣、松本政務官に出席いただき開催。集中検討課題と中長期課題とを議論しました。


山口大臣から冒頭宣言、「人材育成、地方創生、海外展開に力を入れる。」よろしくどうぞ。
知財本部にて集中検討するテーマと、中長期テーマとを話し合いました。

まず、集中検討テーマ。産業財産権分野では「知財紛争処理」と「地方の産学連携・中小企業支援」、コンテンツ分野では「アーカイブ」と「海外展開」となりました。

瀬尾さん:アーカイブと海外展開とあるが、海外展開のためにもアーカイブのシステムを連携させるべき。情報発信と地方創生をもつなぐ大きなメタのビジョンが必要。

角川さん:無体化していくデータを国民がネットワークで利活用できるようにする施策が重要。権利者情報のメタデータを整備せよ。

井上さん:アーカイブには経済効果を生みにくいものもある。資金手当をする上でもその評価指標が重要。

喜連川さん:日本ではコンテンツが狭い意味に閉じ込められている。ITの変化を踏まえ、そのとらえかたも捉え直すことが必要。

次に、中長期テーマ。「知財人財育成」と「次世代知財システム」の2点となります。後者は角川さんと進めてきた「IP2.0」の議論を政府に持ち込みます。

荒井さん:知財は第二世代に移行。政策・制度も改良より革新を。コンプラが厳しいが、IT関係は大半がグレイ。それを実行できる環境が必要。

瀬尾さん:世界基準に適合するのも1つだが、日本発で特殊化するのも選択肢。地方創生から海外展開の一気通貫は日本型モデルになる。2020年の五輪というベンチマークを活かそう。

喜連川さん:コンピュータが論文を書き、人間が査読することが現実となっているが、そのプログラムは人間が書いている。知財とは何か、の原点に立ち戻る時期。

みなさん、的確なことをおっしゃる。

IP2.0にはぼくも関わっていたので、コメントしたいこと多々あれど、座長なので控えていました。
IP2.0は民間が議論を先取りし、過激な意見をぶつけあったもの。それを政府がすくいあげて政策論にするというのは意義のあるモデルと考えます。

コンテンツ分野は大きなステージの転換期にあります。この20年、デジタル化(PC、ネット、コンテンツ)が進められ、この5年はスマート化(スマホ、クラウド、ソーシャル)の対応でした。その次が来ます。
それはインテリジェント、IoT、ビッグデータ等に代表される環境変化で、それはコンテンツの定義にも制度や政策にも問い直しを求めます。

デジタルからスマートへの過程で、政策対象となるコンテンツも、エンタメビジネスから「誰でも作る情報」へと広がりました。それがさらに機械が作る情報やビッグデータにも広がります。
従来は特許や著作権が行政の対象でした。知財をいかに守るか、がデーマでした。これからは、知財をいかに生産して、蓄積して、利活用するのかが中心になります。

知財本部での中長期テーマの議論はしばし時間をかけて進めます。おたのしみに。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。