携帯電話は我々の「生殖行動」を変化させたのか

アゴラ編集部

某人気メルマガのネタ本の一つにロビン・ベイカー著『精子戦争』というものがあります。いわゆる「生殖行動」を我々ヒト、とりわけ男性について著者の視点から解説した内容になっている。ヒトに発情期がない、というのは有名な話ですが、女性がなぜ排卵周期を「隠す」のか、さらに隠されたその周期を男性はいかにして読み解くのか、なんてことなどが書いてあります。


こうしたヒトの「生殖行動」は、何十万年もかけて変化しつつ環境に適応し、いわゆる「利己的な遺伝子」的な観点から観察すれば、男性も女性もいかに自分の遺伝子、子孫を効率的に残すのか、という過酷な競争、つまり「戦争」になっている、というわけです。このように、環境の変化にも適応しなければ、この「戦争」に勝ち残ることはできない。どうなれば「勝者」となるか、端的に言えば、男性はより自分の遺伝子を受け継いだ子どもを女性にたくさん産ませることができるかであり、女性はいかにより「優秀」な遺伝子を男性から得るか、ということにつきます。

ヒトを含む有性生殖、つまりオスとメスがそれぞれの遺伝子を混ぜ合わせる、という行動では、とりわけ「マッチング」が重要となります。たとえば、広い海洋にちりぢりバラバラになっている生物種が、繁殖期にだけオスとメスがめぐりあうのは我々が考えるほど簡単ではありません。これがナマコのように移動が苦手な種ではなおさらです。カイコガがカギとカギ穴のようなフェロモンを出すのも、広大な森林でオスとメスが効率的にめぐりあうためです。

我々の生活は、この数十年でこれまでの何十万年よりずっと早く大きく変化し続けています。男性と女性の「マッチング」も古今東西で多種多様な手段が発達してきましたが、インターネットやスマホなど、これほどまで通信手段が発達すると「マッチング」の方法にも変化が生じてくる。いわゆる「出会い系」なども、基本的には男性と女性それぞれのニーズを「誰にも知られず」に効率良くスリ合わせるためにできたわけです。

表題の記事では、携帯電話の普及で我々のコミュニケーションが変化したことにより「生殖行動」はどう変わったのか、というビッグデータを利用した調査研究を紹介しています。米国の高校卒業直前の男女学生の通話について調べてみたところ、通話頻度では午前中の使用が多く、特定の相手とは夕方や夜など決まった時間帯に通話する、というようなことがわかりました。女性は夕方に長時間の通話が顕著にみられ、また高校を卒業後に大学へ進学したり社会へ出たりしても、こうしたパターンは維持し続けられます。

これらは、予想通りの結果、とも言えます。しかし、男性と女性では携帯電話をどう「生殖行動」に効率的に使うのかという点で違いがあったり、女性がパートナーの男性のほうに親や兄弟などの親族よりも通話の時間や頻度にエネルギーをずっと多く「投資」している、ということがわかったりして興味深い。また、携帯電話の通話時間帯では「夜」が重要で、親族との「絆」を確かめたり強めたりするため、特に夜に親や兄弟と通話することもよくみられ、携帯電話というコミュニケーションツールができたとしても、我々の「生殖行動」はコンサバで頑固で環境変化にもかなり耐性があるようです。
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MIT Technology Review
Mobile Phone Data Reveals Humanity’s Reproductive Strategies


Researchers develop the first-ever quantum device that detects and corrects its own errors
PHYS.ORG
Googleとカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の共同技術陣が、9量子ビット(qubit)の量子コンピュータを開発した、という記事です。このコンピュータは自らのエラーを修正する自己修復能力を持っているらしい。量子ビットでは、従来の古典的なコンピュータビットの2進法に計算を重複させることで、複数の演算が可能になります。これが驚異的な計算能力をもたらすわけですが、同時に非常に不安定、という難点がありました。今回、開発された量子コンピュータはその不安定さを自分自身で直し、消えてなくなりそうなデータを保存するようなことができる。量子コンピュータがいよいよ実現段階へ入ってきたのかもしれません。
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9量子ビットのデバイス。Credit: Julian Kelly

電球のソケットにとりつけて使用する電球っぽいプロジェクター「Beam」
THE BRIDGE
電球型のプロジェクターというのは、すでにパナソニックなんかが作っています。Wi-Fiでワイヤレスで操作できたりするのも同じ。ただ、電球のソケットで使える、というのミソでしょうか。KICKSTARTERではすでに目標額の三倍以上を集めています。日本のACソケットでも使えるんでしょうか。
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「グエルチーノ展」
弐代目・青い日記帳
国立西洋美術館で5月31日まで開かれている「グエルチーノ展」を紹介しているブログです。17世紀、イタリア・ルネサンス、バロックの画家。ミケランジェロやレオナルド・ダ・ビンチほどではないながら、イタリアでは国民的な画家として敬愛されているらしい。初期と後期では画風がかなり変わる点が見どころです。
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グエルチーノ展」のHPより。

「素っ気ないメール」を熱のこもったメールにしてくれる拡張機能
WIERD.jp
メールのやり取りは、けっこう間違えると悲惨なことになります。単なる連絡事項の羅列だけでいいんじゃないか、という意見もある。しかし、やはりこれもコミュニケーションの一つ。無用な摩擦や軋轢はないほうが人生はより無難に過ごすことができます。この記事で紹介しているGoogleのGmail用の拡張機能。後半で明かされているように、メールを取り巻くなんやかやに対する皮肉の要素が入っているようです。


アゴラ編集部:石田 雅彦